僕は建築のいらない世界をずっと夢見てきた。:岡啓輔インタビュー

 
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蟻鱒鳶ル(2012年5月)

 
デザインを消すという観点からは、型枠大工を選択したのは筋道がいいなと思っていました。
何故かというと、材料と材料がぶつかるということは必ずそこにディティールが発生してなにかしらの形が生まれてくるんですよ。かなりデザインの話なんですけれども、どうぶつけようが、違う材料を組み合わせるということはそういうことになります。ところが、コンクリートでつくってしまえば結局は、一体のコンクリートになってしまうから、そういうことがなくなります。
 
僕は、型枠大工をはじめて、あ、これはいける、これをずっと僕はやっていけばデザインを消すコンクリートのデザインができるんじゃないかと思ったんです。
 
そのころ若かりし安藤忠雄さんもやっぱりデザインを消すということを考えてたんじゃないかな。安藤さんはドーンとするものをつくるけれども、やっぱりデザインの消し方が上手で、消そうという意志が強いのがわかりました。だからほっとくと土の中に埋めちゃうんです、建築を。
 
それは建築の問題だと思う。美術とか、そういう小さなものを大切に作る仕事って、なにかこう、自分のしらじらしさも乗り越えられるんですよ。
 
小さいものを丁寧につくるから、「わかる」という領域で。でも建築は巨大なものをつくらなきゃいけなくて、しかも他人のお金で期間が定まっていてつくらなきゃいけないから、自分の表現をするということにはかなり不向きな気がします。そこで建築家やデザイナーは悩むんです。自分がやりたいことをどうやって引っ張り出すか。というのは本当に難しいんですよね。
 
だから、型枠大工をはじめてよしよしこれでデザインを消せるな、そういうラインに自分はいけるなと思い始めていました。ちょうど30歳くらいの頃でした。
 

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