一般社団法人HAPSは、京都市にゆかりある若手アーティストの作品販売を支援するため、アートのオンラインマーケットプレイス「OIL by 美術手帖」にオンラインギャラリー「HAPS KYOTO」を出店するとともに、「HAPS KYOTO」の出展作品をオフラインで直接ご覧いただく展覧会シリーズ「HAPS KYOTO selection」を京都市内の各所で定期的に開催しています。
この度、「HAPS KYOTO selection」第5回として、新たに「HAPS KYOTO」での取り扱いをスタートする黒木結をフィーチャーし、HAPS KYOTO selection #5 黒木結「地球に線を引く:パレスチナ/イスラエル」展を、2024年9月21日(土)よりHAPSオフィスで開催いたします。
黒木は、2023年10月7日のハマスによるイスラエル側への越境攻撃と、その反撃として始まったイスラエルによるパレスチナへの大規模侵攻をきっかけとし本作の制作を開始しました。遠い距離を隔てた私たちが実感し難いほどの数の人々が、現在に至るまで生命や文化を失い続けています。攻撃の日から2024年9月20日までの、パレスチナとイスラエルにおける死者数と同じ数の線を引くことにより、黒木はそうした人々の死を「自分の実感に手繰り寄せ(ステイトメントより)」ようと試みています。
線を引くという行為を通じて、ひとりひとりの生命が存在した証を顕在化させつつ、世界の歪みが生み出した悲劇に対して私たちが抱いている距離感と、それでも知り、行動しようとする意思への道を拓こうとする実践をご高覧ください。
■概要
イベント名|HAPS KYOTO selection #5 黒木結「地球に線を引く:パレスチナ/イスラエル」
会期|2024年9月21日(土)〜10月20日(日)
会場|HAPSオフィス1F(京都市東山区大和大路通五条上る山崎町339)
鑑賞時間|18:00〜9:30(翌日朝)
休館日|会期中無休
料金|無料
主催|一般社団法人HAPS
- 黒木の作品は9月21日(土)18:00よりアートのオンラインマーケットプレイス「OIL by 美術⼿帖」で購入が可能になる予定です。
- 本展はHAPSの東山オフィス1Fに展示された作品を、ウィンドウ越しに建物の外からご鑑賞いただく形式となります。終夜のご鑑賞が可能です。
■ステイトメント
地球の上に線を引きたい。 色んな場所を通る線を引いて、それをそのまま道として、その線に沿って実際に地球の色々なところを歩く想像をしたい。
線を引くことを、断絶を生むものではなく、道を作ったり、何かを知るためのガイドラインになるような行為として捉えてみる。
自分は、世界で起こっている様々な問題の現場に立ち会ったことがありません。でも、ほとんどの人は自分と同じような状況で世界の問題を見ているのではないかと思います。ニュースやSNSなど、情報でしか知ることができない問題に対して、距離を感じたり悩んだりしているのではないでしょうか。
それでも「見ていないから何も言えない」と言ってしまうと、今苦しい状況にある人々をそのままにしておくことになってしまうような気がします。
全てのことに関わりきれない自分の愚かさと、誰かの痛みを自分のものにできない距離と、それでも知らずにはいられない現状を抱えながら、線を引いてみようと思っています。
本展では2023年10月7日にハマスのパレスチナ人戦闘員による越境奇襲攻撃に対し始まった、イスラエルによるこれまでにない規模のジェノサイド攻撃をきっかけに制作をしています。
制作をするなかで、このジェノサイドが昨日今日のことではなく、76年前イスラエル建国に伴い約70万人のパレスチナ人が難民となった「ナクバ」や、長年にわたるパレスチナへの占領と地続きであることも知りました。知る機会がこれまでにもあったのに気付けていなかったこと、知るのがあまりにも遅すぎたことを痛感しています。
実感できないほどの数の人々が、今もなお、毎日命と土地と生活と文化と学問と医療とあらゆるものを奪われているのを、残酷な距離を感じながら見ています。
人が数になってしまう距離があり、切実さを伝えるために、人を数にして訴えるしかない現状があります。
少しでも人々の死を自分の実感に手繰り寄せるために、2023年10月7日から2024年9月20日までの、パレスチナとイスラエルにおける死亡者数と同じ数、線を引くことにしました。
この線は、カウントするためのものであり、ひとりの人間を表すためのものでもあります。
今、自分が作品でできることは、人を人としてではなく数やものとして扱われているような状況を共有し、「もうこれ以上誰も死なないでほしい」ということを伝えること、それを願望ではなく現実にするために行動してくれる人々を増やすことだと思っています。(黒木結)
◼️アーティストプロフィール
黒木結(くろき ゆい)
美術家。2017年京都市立芸術大学美術研究科彫刻専攻修了。身近な問題を自分や社会の視点から分かろうとしたり、答えを見つける機会として、身近な人の協力を得ながら作品制作や展覧会企画などを行う。展覧会企画・作品制作以外に、ご飯を作る代わりにご飯を食べさせてもらう「FOOD」という活動や、「おばけの連判状」という共同制作も行っている。
近年の主な発表に「クィア/女の議会」(山中suplexの別棟「MINE」、大阪、2023)、「鑑賞のプロセス:フランシス・アリス」(THEATRE E9 KYOTO、京都、2023)、「Wake-up Call」(愛知文化芸術センター、2022)などがある。
◼️参考作品
◼️HAPS KYOTOについて
HAPSでは京都にゆかりある若手アーティストの活動環境の向上、アート市場の活性化、アーティストとコレクターの新たな関係づくりを図るため、アートのオンラインマーケットプレイス「OIL by 美術手帖」にオンラインギャラリー「HAPS KYOTO」を出展し、京都の作家と作品を紹介・販売しています。今後の飛躍が期待される若手や商業ベースに乗りにくい作家、京都のアートシーンに確かな足跡を残してきた作家をHAPS独自の視点でセレクトし、収益は各作家ならびに今後の作家支援に還元されます。若手から中堅まで、性別を問わず、障害の有無を問わず、美術/工芸やハイアート/サブカルチャーなどの垣根を超えて、HAPSにしかできない方法で「多様な表現」のあり方を守り、発展させることを目指します。
現出展作家:阿児つばさ/上田要/金氏徹平/清水宏章/黒川岳/小林椋/武内もも/鬣恒太郎/谷澤紗和子/HABURI/藤田紗衣/水木塁/迎英里子/八幡亜樹/山﨑愛彦/リュ・ジェユン
作品販売ページ:https://oil.bijutsutecho.com/gallery/277
これまでのHAPS KYOTO selection:https://haps-kyoto.com/category/news/hapskyotoselection/