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奥村博美展 Gradation towards Evolution

開催情報

【期間】 2024年3月9日(土)- 3月24日(日)
【開館時間】11:00〜19:00
【休館日等】水曜日・木曜日
【料金】無料

https://www.g-utsuwakan.com/gallery/exbt-20240309

会場

会場名:GALLERY器館
webサイト:https://www.g-utsuwakan.com
アクセス:〒603-8232 京都市北区紫野東野町20-17
電話番号:075-493-4521

概要

 奥村博美さんの三年ぶりの個展です。私事にわたりますが、彼とは長年仲良くしてもらっていて、年も筆者と同じくらいです。二十代の終わりごろからのご縁になるでしょうか。ということは四十年になんなんとするわけで、あっという日月の過ぎ去りようにはいやになってしまいます。しかしはるけき懐かしの思いがします。個展は幾度お願いしたか忘れるほどで、若いころは毎年のようでした。週に開けず夜は一緒に呑み歩いてました。記憶が飛んでしまう夜もあり、今から思うと結構危なかったです。酔余のあまり言い合うようなこともありました。そうこうしているうちに、奥村さんは学校へ行ってしまいました。多少縁遠くなってしまいました。それから彼は何年教師だったでしょうか。教えに行くことが面白かったのかどうかわかりませんが、いやそれ以前に生活のこともあったのかもしれませんが、二十数年ほどの宮仕えだったと思います。長い時間です。そして近年退職されました。筆者は彼が教師になるとき、直感的になにか面白くないものを感じました。得手勝手な言い分ですが、親しかった人が縁遠くなり離れて行くようなといいますか、また昔から人生教師になるなかれといいますが、芸術の人にとっての大切な自由と、それから時間というところで、なにか悪い影響を及ぼさないだろうかと思ったものです。でも彼は、その間もペースは落ちましたが折々に作品は発表していました。そこはえらいと思います。そして宮仕えからようやく解放されるのだなあという前後に、続く時は続くもので、交通事故に見舞われたり、厄介な病を得たりと、困難な日々を経験することになりました。ここ数年のことです。事故の影響で手指の動きに支障をきたすことにもなりました。筆者は彼を教師ではなく作家として見ていましたから、ようやくこれからが巻き返しなのにと、残念至極に思いました。なんでやという思いがありました。少しく腹立ちまぎれに、遠慮がないものですから、「何十年も宮仕えなんかするからや。長いわ。」と言わせてもらったら、苦笑いして憮然とされていました。
 しかしながら、彼のもの生(な)す力には底力が秘されていたようで、前回展では新手(あらて)のもので作品を揃えて来られました。着想と構想は一からと言っていいものでした。その実現のための技法とプロセスも、彼ならではの工夫と試行を凝らしたものでした。不利な身体的与件によく耐え、新作を出して来られたのです。それは不利な条件を逆手にとったようなもので、不自由があったからこその成果だったように思います。初見のとき、どのようなプロセスで作り上げたのか全く分かりませんでした。彼からそれをつぶさに教えてもらいましたが、複雑かつ周到な技法で、またアドベンチャラスなものでした。前回の案内状に詳しく書きましたのでここでは繰り返しませんが、やはりこの人は並々ならぬ造形の力をもつ人なのだなと再び知って、嬉しくなってしまいました。
 写真の作はその進化形ともいうべきものでしょうか。銘して”襤褸のうつわ”といいます。ランルと読みます。前回は”緊縛のうつわ”としていましたが、緊縛というと罪人を縛り上げるとか、ある種の性的嗜好の場面を連想させるきらいなきにしもあらずということで変わりました。この作品は差し渡しが50センチほどもある迫力ものです。なにか不思議な気配をもっています。抽象されている事柄の裾野の広さをといったものが窺えて、饒舌に物語ってくるようです。薄く施釉され、内はまったりと黒化粧されています。炭化の跡も見え陰翳を深めていると思います。
 芸術の人はものを生すことによってのみ生き甲斐を得られるのだと思います。自由と束縛、達成と失敗、歓喜と絶望、共有と孤独、安堵と不安、評判と不評、生活と方便(たつき)といった往還のなかで、きついですが制作を継続し、思うところのものを作ることができたらもって瞑すべきなのでしょう。奥村さんの現在と作品は、いろんなことがありましたが、まだまだエボリューションの可能性があると見たいです。身体的な支障も、がんばっておられるのか、作品同様に良き方へ向って行きつつあるようです。古い知己として太鼓判を捺したく思っているのです。何卒のご清賞を伏してお願い申上げます。-葎-

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