東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)では、2017年8月1日(火)より、キュレーター・武本彩子の企画により、ALLNIGHT HAPS 2017前期「日々のたくわえ」を開催いたします。それぞれ「狩猟」「畜産」「屠畜・解体」「加工・消費」をテーマに据えた4名の美術作家の個展の連続開催となります。
概要
ALLNIGHT HAPS 2017前期「日々のたくわえ」
会期 2017年8月1日(火)〜12月4日(月)
企画 武本彩子
出展作家
#1 井上 亜美「まなざしをさす」2017年8月1日(火)~8月31日(木)
#2 廣田 真夕「みいちゃんのお墓」2017年9月2日(土)~9月29日(金・祝)
#3 迎 英里子「アプローチ0.1」2017年10月4日(水)~11月3日(金・祝)
#4 札本 彩子「last night meal」2017年11月10日(金)~12月4日(月)
展示時間 18:00〜9:30(翌日朝)
会場 HAPSオフィス1F(京都市東山区大和大路五条上る山崎町339)
主催 東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)
支援 平成29年度 文化芸術創造活用プラットフォーム形成事業
助成 公益財団法人 朝日新聞文化財団
協力 Gallery PARC
「日々のたくわえ」Facebookページ
企画趣旨
住宅地の中に立地し、夕食前の家路をたどる人々が通りすぎるHAPSで、約4ヶ月にわたり、それぞれ「狩猟」「畜産」「屠畜・解体」「加工・消費」をテーマに据えた4名の美術作家の作品を連続で展示をします。
井上亜美(いのうえ あみ/1991年宮城県生まれ)は、震災後、猟をやめたマタギの祖父の影響から、狩猟免許[散弾銃]を取得し、現在は京都の山へ行き猟を続けています。狩猟の現場を自ら記録し、編集した映像からは、淡々とした猟師の生活の「普通さ」「普通でなさ」を見てとることができます。
廣田真夕(ひろた・まゆ/1991年東京都生まれ)は、大学卒業後に養豚場で働いていた間、毎日の業務の記録のため書きためていた個人的な日記をもとに、養豚場での生活の一場面を切り取った大画面の絵画を描きます。
自然現象や歴史、ものごとのプロセスやシステムを調べ、身近な素材に置き換えた装置をつくり、実際に自ら動かす迎英里子(むかい えりこ/1990年兵庫県生まれ)は、「屠畜」「解体」について綿密に調査し、インスタレーション/パフォーマンス作品を制作してきました。
札本彩子(ふだもと あやこ/1991年山口県生まれ)は、弁当工場での作業経験をもとに、普段口にしている料理、菓子、肉、野菜や果物など、精巧にできた自作の食品サンプルを大量に用いて彫刻作品をつくります。
仕事をきっかけに、あるいは並々ならぬ興味をもって、各々の題材に向き合い制作する彼女らの作品からは、「食べること/つくること/生活すること」をめぐる、「問い」が浮かび上がってくるようです。しかし、そこには何か明白な「答え」が期待されているわけではありません。
彼女たちの表現は、日々生まれては消えていく、自身の経験、感情、思考、プロセスといった「生(なま)もの」のような何かを、手ざわりを得られる方法で一旦保留し、他者や未来の自分と共有可能にする、「たくわえ」のようなものと呼べるかもしれません。
それはきっと、彼女たちだけではなく、日常生活をおくり、つくり、食べ、消費をする、私たちにとっても同時に、何らかの「たくわえ」となるはずだと信じています。
(企画・武本彩子)
出展作家
[1]井上亜美(いのうえ あみ)
1991年宮城生まれ。2014 年京都造形芸術大学こども芸術学科卒業。2016年東京藝術大学大学院映像研究科修士課程修了。在学中に狩猟をはじめる。現場でつぎつぎに起こる出来事をエスノグラフィックな視点で見つめ、自身が出演・演出・記録する手法で映像作品を制作している。作品に、都会で暮らす猟師の奇妙な生活を描いた「猟師の生活(2016)」、震災後に猟をやめた祖父を追った「じいちゃんとわたしの共通言語(2016)」などがある。主な展覧会に「猟師の生活」(トーキョーワンダーサイト本郷、東京、2017)、「ULTRA AWARD 2016 ニュー・オーガニクス」(京都造形芸術大学、2016)など。現在、第5期HAPSスタジオ使用者として京都在住。http://amiinoue.com
[2]廣田真夕(ひろた まゆ)
1991年東京都生まれ。2015年多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業。近年の主な展覧会に、「Artists in FAS 2016」(藤沢市アートスペース、神奈川、2016)、「損保ジャパン美術賞 FACE 2013」(損保ジャパン東郷青児美術館、東京、2013)、「トーキョーワンダーウォール公募2013 入選作品展」(東京都現代美術館、2013)。近年の受賞に「損保ジャパン美術賞 FACE 2013」入選(2013)、「トーキョーワンダーウォール公募2013」トーキョーワンダーウォール賞・トーキョーワンダーウォール審査員賞(2013)、「第17回岡本太郎現代芸術賞」入選(2013)など。
[3]迎 英里子(むかい えりこ)
1990年兵庫県生まれ。2013年 京都市立芸術大学美術学部美術科彫刻専攻卒業。2015年 京都市立芸術大学大学院美術学部美術科彫刻専攻修了。主な展覧会に、「京芸transmit program 2017」(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、京都、2017)「新しいルーブ・ゴールドバーグ・マシーン」(KAYOKOYUKI、東京、2016)、「対馬アートファンタジア2016」(長崎県対馬市厳原町、2016)、「アプローチ2 (石油)」(Gallery PARC、京都、2016)、「アキバタマビ21特別企画展 捨象考」(3331 Arts Chiyoda アキバタマビ21、東京、2015)、「approach 1 (original) approach 1 (archive)」(Alainistheonlyone gallery、東京、2015)。
[4]札本彩子(ふだもと あやこ)
1991年山口県生まれ。2014年京都精華大学芸術学部造形学科卒業。主な展覧会に、「Kyoto Art for Tomorrow京都府新鋭選抜展2017」(京都文化博物館、2017)、個展「inside」(KUNST ARZT、京都、2016)、「LINK展14 Reasonable Anger形ある怒り」(京都市美術館、2016)「what is “trash”? —アイ、ヒト、アート」(元立誠小学校、京都、2015)、「S」(元立誠小学校、京都、2013)。
企画者プロフィール
企画:武本彩子(たけもと あやこ) キュレーター/アートコーディネーター
1988年岡山県生まれ。2012年神戸大学国際文化学部卒業。京都芸術センターアートコーディネーター(2013〜2016)を経て、現在Gallery PARC(京都)スタッフ。ギャラリーでの業務とともに、外部の展覧会企画・コーディネートをつとめる。主な展覧会企画に、『アンキャッチャブル・ストーリー』(瑞雲庵、2017)、『ハイパートニック・エイジ』(2015)、『NEW HOME』(2014)、主な展覧会コーディネートに、『アン・リスレゴー:Shadow Ya Ya』(2015)、『小谷元彦:Terminal Moment』(2014)ほか。
関連プログラム
[1]ゲスト・トーク「狩猟の民族考古学 —台湾のイノシシ猟から—」
日時:2017年8月11日(金・祝)19:00〜21:00
ゲスト:野林厚志(国立民族学博物館教授)
聞き手:井上亜美、武本彩子
※ 要事前申込・参加無料
予約/問合せ:info@haps-kyoto.com
ゲスト:
野林厚志(のばやし あつし)
1967年大阪府生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程中退。国立民族学博物館教授・総合研究大学院大学教授。専門は民族考古学・台湾研究。台湾の原住民族社会を中心に、エスノアーケオロジー・工芸生産の調査を行なっている。主な著書に『タイワンイノシシを追う 民族学と考古学の出会い』(臨川書店、2014)、『イノシシ狩猟の民族考古学 台湾原住民族の生業文化』(お茶の水書房、2008)、『台湾原住民研究の射程』(主編著、順益台湾原住民博物館、2014)、『先住民とはだれか』(共編著、世界思想社、2009)などがある。
[2]アーティスト・トーク:井上亜美・廣田真夕
日時:2017年9月2日(土)19:00〜20:30
聞き手:武本彩子
[3]パフォーマンス:迎英里子
日時:10月25日(水)、11月3日(金・祝)19:30〜
[4]アーティスト・トーク:迎英里子・札本彩子
日時:12月2日(土)19:00〜20:30
聞き手:武本彩子
ALLNIGHT HAPSについて
本企画は、若手アーティストおよび若手キュレーターの養成を目的とし、年間2名の企画者による展覧会シリーズです。HAPSオフィスの1階スペースにて終夜展示を行い、道路からウィンドー越しに観覧いただく構成となっています。