ALLNIGHT HAPS 2020「Probable Cause」

アーティストの小松千倫による企画「Probable Cause」には、7名の作家が参加します。今後は、小松が作家らとオンラインでのやり取りを重ね、どのような形で「グループ展」を行うかが決定されます。「新しい生活様式」が喧伝される最中、HAPSというケースを用いて展示をするとすれば、それはどのような形を取るのでしょうか。展覧会は、公衆衛生の名の下に変化しようとしています。鑑賞者は密にならない程度に集うことを求められ、そのために個人情報を主催者に提供しなければならなくなるかもしれません。ALLNIGHT HAPSは、京町家を改装したHAPSのオフィス1階の道路に面したガラス張りの扉越しに、作品を鑑賞します。人と人とを隔てる透明な仕切り、これは今や新たな意味を帯びています。人と人が互いを防衛するための仕切りの中に作品が集う。「密」になることが躊躇われる中、新たなの「集い」のかたちを再考し、実装していく予定です。

※本企画は8月16日からスタートしますが、その時点でHAPSギャラリースペースでのグループ展が完成しているわけではありません。16日から随時、グループ展示の実現を目指して行われる様々なデモンストレーションやテスト、それらのアーカイブが公開され、蓄積していく予定です。最新の情報はHAPSウェブサイト、SNSなどで順次お知らせいたします。

展覧会特設ウェブサイト:https://probablecause.space

概要

ALLNIGHT HAPS 2020「Probable Cause」

会期:2020年8月16日(日)~12月31日(木)
企画:小松千倫
出展者:石毛健太/土井樹/中谷優希/濱田明李/原淳之助/松元悠/Ψυχή
展示時間:18:00〜9:30(翌日朝)
会場:HAPSオフィス1F(京都市東山区大和大路通五条上る山崎町339)
ロゴデザイン:石塚俊
主催:一般社団法人HAPS
支援:2020年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業
助成:公益財団法人 朝日新聞文化財団
本事業は「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う京都市⽂化芸術活動緊急奨励⾦」の採択事業です。

関連イベント

キックオフイベント『LIVING ROOM 8(焚き火)』※終了しました。

「Probable Cause」の初日に、キックオフイベント『LIVING ROOM 8』を開催します。
この日京都では、いわゆる五山送り火が予定されています。しかしながら、新型コロナウィルス感染症の影響により、今年はその規模が大幅に縮小されます。
そこで、この日の夕方から点火の時間帯まで、 HAPSの中庭で「焚き火」を行い、その炎を映像配信します。この燃料には、「Probable Cause」展の参加作家が持ち寄った素材を使用します。焚き火の映像にあわせて、企画者である⼩松が2015年より定期的に行なっている、出張型BGM配信ステーション企画「LIVING ROOM」による音楽と、参加アーティストによるトークも並行して配信します。真夏の夜に京都からお送りする、「Probable Cause」展の幕開けをお楽しみください。 

日時:2020年8月16日(日)18:00〜20:30
出演:AK/Ψυχή/松元悠/原淳之助/⼩松千倫
⾳響・配信:植松幸太

配信映像を公開しました:https://www.youtube.com/embed/eRJYHKELasg

タイムテーブル:
18:00〜18:30 焚き火開始/⼩松によるDJ配信+アーティスト・トーク
18:30〜20:00 AK/Ψυχή によるDJ配信
20:00〜20:30 アーティスト・トーク、焚き火終了

※本イベントは配信のみとなります。当日HAPSへの入場はできませんのでご了承ください。

企画趣旨

 もし「コロナ禍」がなければ普通に好きな作家を集めたグループ展を開催して終わっていたかもしれない。「普通に」というのはこれまで通りという意味で、まとまったテーマがなかったわけではない。そのテーマは「距離」(ご存知ネットの問題)で、ふわふわしたものだった。だが、2020年に入って、これはたちまち身に沁みる問題となった。見えないウイルスについて私はろくに知らない。だから恐れ、線(自己免疫*1)を引いて、ウイルスの姿を透かし見ている。欧米/アジア、彼の国/この国、県境、濃厚接触/ソーシャルディスタンス。これらの境界線越しに。

 2020年5月17日、日本国内の様々な場所で表現活動の自粛が続いていた。リアルにイベントの企画やDJの予定が消えた。企画書を修正している5月30日現在、カテゴリーごと(例えば「特定警戒」-「感染拡大注意」-「感染観察」)の段階的な緩和に応じて美術館や博物館は再開を発表しつつある。しかしそれは、4月28日の国際美術館会議の発表*2に代表されるような、制限付きの「新しい鑑賞様式」のもとで、だ。それは第一に監視の目によって実装される。公共の場での相互監視、「自粛警察」の目。この目のなかに、まっすぐ引かれた<2m>という線があり、クラブやライブハウスや実家やその他いろいろな場所のあやふやな距離はこれまで以上に消えるか隠されていく。ここには「他人の命を害する可能性を高めてまですべき事などあるのだろうか?」という問いがある。そしていま「命を害する可能性」のある距離<2m>が新たに定着しようとしている。しかし少なくとも私は、その距離によって生活できなくなる可能性がある。世界もそのようには出来ていないと思う。つまり、近くのものと遠くのものを「同時に」見ることができないように、空間的距離のリスクを焦点化しすぎているときには、時間の距離は見えづらい。

 本企画では、距離について時間と空間の両面から考えてみたい。それは第一に、「ALLNIGHT HAPS」という展覧会が持っている骨組みを利用し、行為を実験することを通して行われる。HAPS会場で行われている展覧会シリーズ「ALLNIGHT HAPS」では、鑑賞者は会場内ではなく、その外から、ガラス戸越しに鑑賞する仕組みを採用している。また、それは年2回という特性から比較的長期間、そして現在の規制緩和、拡大の進行に対応してパッケージできる。これらの条件を実験材料と捉え、接触・非接触、あるいはあやふやな距離の中活動してきた美術作家、音楽家、映像作家、詩人、表現者を企画者が選出し、密と疎の距離のグラデーションを、表現行為のテストを通して探ろうとする。実験は失敗に対して開かれていなければならない。グラデーションは連続した失敗の層だ。失敗の記録はWEBページに逐次アーカイブされる。

*1 Yuk Hui “One Hundred Years of Crisis”
https://www.e-flux.com/journal/108/326411/one-hundred-years-of-crisis/
*2 4月28日、国際美術館会議(CIMAM)は「新型コロナウイルスが蔓延する状況」において美術館が注意すべき「Precautions for Museums during Covid-19 Pandemic」と題された20の項目を発表。
https://cimam.org/news-archive/precautions-museums-during-covid-19-pandemic/
特に項目2に注目。
2.Implement visitor registration and contact tracing measures at the entrances and admission points to events and venues, such as obtaining the contact details of visitors and participants (name, phone number, and email address).
二、会場入口で、来館者やイベント参加者の連絡先(氏名、電話番号、メールアドレス)を把握するなどし、来場者を記録。連絡先を追跡できるよう対策を実施すること。
(美術手帖、https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/21807)
この場合、来場者は美術館に「ログイン」する必要があり、匿名の鑑賞者は存在しない。

(企画者:小松千倫)

出展者プロフィール

石毛健太(いしげ けんた)

1994年生まれ。2018年東京藝術大学大学院修了。アーティスト、インディペンデントキュレーター。主な参加展覧会に、「Scan The World」 (STAGE:CORECRIVE BEHAVOR、東京、2018)、「生きられた庭」(京都,2019)、「東京計画vol.3」(URG NEW ADDRESS、東京、2019)。
主なキュレーションに、「変容する周辺 近郊、団地」(東京、2018)、「高橋臨太郎個展 スケールヒア」(東京、2019)、「working/editing 制作と編集」(東京、2020)。

 
 
土井樹(どい いつき)

1989年兵庫県生まれ。2019年東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻修了。学術博士。社会性生物の群れの運動や人工システム内に創発する主観的時間などのテーマで研究をするとともに、アート/音楽作品の発表を行っている。主な展示に「Blues」(Place by method、東京、2017)、「Bee Wee」(TALION GALLERY、東京、2020)。
主な作品に《Uonotayu》(CD、2010)、《Peeling Blue》(CD、2018)。また、CM、インスタレーション、展示のサウンド制作及びソフトウェアプログラミングも手がけており、主な近作には『Jens|PREVIEW 17SS』(音楽)、『Yuna Yagi: NOWHERE』(音楽/サウンドプログラミング)、『Alter』(音楽/サウンドプログラム、Ars Electronica Award of Distinction)などがある。

 
 
中谷優希(なかや ゆうき)


1996年北海道生まれ。2020年東京藝術大学美術学部先端表現学科卒業。ここのがっこう・文化服装学院在籍中。
主な展示に、「Rêver 2074」(主催:COMITÉ COLBERT コルベール委員会、東京藝術大学、2017)、「京都:Re-Search 2018 in 亀岡」レジデンス参加(主催:京都:Re-Search実行委員会、2019)、同成果展「大京都 2020 in 亀岡 移動する有体」(COVID-19のため中止、2020)、「68回東京藝術大学卒業・修了作品展」(主催:東京藝術大学、2020)。

 
 
濵田明李(はまだ みり)


1992年高知県生まれ。武蔵野美術大学油絵学科卒業。パフォーマンスで作品をやり始めてしっくり来る。パフォーマンスでは、達成を目指さなかったり、中止したり、その場所の特性を取り入れたり、オブジェを持ってきて、15分とか20分とかのあいだに起きる一連のことを観客と共有するというのが特徴。2017年から2019年位までのメキシコに住み、好奇心の赴くままに学ぶ。他のアーティストとの有形無形の恊働や自主企画にも積極的。

 
 
原淳之助(はら じゅんのすけ)


1993年群馬県生まれ、京都在住。アーティスト、エンジニア。主な展覧会に「タウンワークス ―街と創造の間―」渋谷PARCO GALLERY X、2020年1月。個展「≃」(ANAGRA、2019年3月)など。

 
 
松元悠(まつもと はるか)


1993年京都府生まれ。主にリトグラフ技法を用いて多版多色の版画を制作する。新聞、テレビ、ウェブ、伝聞などで偶然知ったニュースを取り上げ、当事者に関する周辺の現地訪問をした後に版におこす。マスメディアの向こう側で起こる出来事から、共感でもなければ消費でもない、当事者不在のコミュニケーションを試みる。主な個展に、「独活の因縁」(MEDEL GALLERY SHU、東京、2020)、「活蟹に蓋」(三菱一号館美術館、東京、2019)、「血石と蜘蛛」(YEBISU ART LABO、愛知、2019)、「カオラマ」(京都芸術センター南・北、京都、2018)などがある。

 
 
Ψυχή


1991年福島市生まれ、京都市在住。DJ、アーティスト、グラフィックデザイナー。2016年頃より大阪、東京を中心にクラブイベントを多数オーガナイズ。主なイベントにDARKJINJA(東京・大阪・上海、2017~2019)、FREE RAVE(渋谷WWW、2018・2019年)等。

企画者プロフィール

小松千倫(こまつ かずみち)


1992年高知県南国市生まれ。京都市在住。音楽家、美術家、DJ。2009年よりコンピューターを使った作曲をはじめる。angoisse、BUS editions、flau、Manila Institute、psalmus diuersae、REST NOW!等のレーベルやパブリッシャーよりアルバム・EPを多数リリース。Arca、Tim Hecker、Mark Fell、Julia Holter、Die Reihe、Mount Kimbie、The Field、Clarkらの来日公演をサポートしている。SNSにおけるアカウント間のコミュニケーションのコードなどに注目しつつ、それらを自己の身体感覚でフィルターするような音響・映像作品を展開する。
主な展覧会に「FAKEBOOK」(Workstation.、東京、2016)、「oF -Katsue Kitasono-」(福岡アジア美術館、2017)、「Tips」(京都芸術センター、2018)、「ニューミューテーション #2「世界のうつし」展」(京都芸術センター、2019)、「Bee Wee」(TALION GALLERY、東京、2020) など。
主なパフォーマンスに「ZEN 55」 (SALA VOL、バルセロナ、2018)、「Untitled」(Silencio、パリ、2018)、「Genome 6.66 Mbp VS Dark Jinja」(ALL、上海、2019)、テオ・カシアーニ「LECTURE (02) 」(京都芸術センター、2019)、「悲哀总会」(Senggi Studio、ソウル、2019)、イシャム・ベラダ「Présage」(横浜トリエンナーレ2020 エピソード00、横浜、2019)など。

ALLNIGHT HAPSについて

本企画は、若手アーティストおよび若手キュレーターの養成を目的とする、年間2名の企画者による展覧会シリーズです。HAPSオフィスの1階スペースにて終夜展示を行い、道路からウィンドー越しに観覧いただきます。

2020年度の第1弾企画「翻訳するディスタンシング」(企画:佃七緒)についてはwebページ(http://haps-kyoto.com/allnighthaps-2020_1/)をご参照ください。

これまでのALLNIGHT HAPSアーカイブはこちらhttp://haps-kyoto.com/allnight-haps-archive/




助成: