わたしたちはうかんでいる
札幌は雪の町だ。
さっぽろ天神山アートスタジオでは、2014年5月の開設以降、ほぼ毎年のように、札幌の冬・雪をテーマとする公募型アーティスト・イン・レジデンスプログラムを行ってきた。過去10回のこの公募型AIRプログラムを通して多数のアーティストが、札幌の、北海道の私たちの生活や文化に深い豊かさをもたらしているこの場所の風土で共に時間を過ごし、一時的ではあるけれども、札幌の私たちと同じように冬、雪との暮らしを体験した。
公募型AIRプログラムの際には、同じ建物の中に自主的なAIRを選んで滞在している、ほかのアーティストもいる。そのため、公募型AIRプログラムのアーティストはひとりきりではないものの、参加しているプログラムの成果報告というゴール向かって、やはり孤独に研鑽を重ねてきた。
10回目となる今年の公募型AIRプログラムでは、プロジェクトのプランに「札幌で暮らしている人・グループ等」とコラボレーションすることを条件にしてみようと思う。応募するアーティストは、未知の、理想のコラボレーターを想像しながら、「札幌でなにをやるか、やろうとするか」を提案してほしい。
選ばれた提案とアーティストとは、2024年秋に、オンラインで打ち合わせを行い、プログラムがスタートする冬(2025年1月)までに、さっぽろ天神山アートスタジオといっしょにコラボレーターを見つけ、その人・グループといっしょに、札幌での冬の暮らしをベースにしたプロジェクトに着手することになる。
なんだかやりにくいだろうか?それともわくわくするだろうか?
「雪の上で、ずっとうかんでいるみたい。」札幌のアーティストのひとりが言ったことである。その意味は、札幌では地面に積もる雪が冬の間留まり、いつも足の下にある。雪のない時の地面から、少なくとも30-40センチくらいは高い、へたをすると1メートルくらい高い表面を私たちは、あたりまえのように歩いている。イランのアーティストは、この状態を「町が水に浸かっているようだ」と。そして彼女は、雪の上を優雅に航行する船をつくってアニメーション作品に仕上げた。これらアーティストたちの視点が、都市と雪、雪と暮らす私たちにこれまでとは違う自由を与えてくれたように思った。わたしたちは常にうかんでいて、どこにでも行ける、と。まるで未来の乗り物を手にしているような爽快な感覚。
そう、札幌では冬の間、私たちは物理的にうかんでいる。いまとらえたくなくてもとらえざるを得ないこの感覚は、雪の上での楽しさや雪がある故に獲得したある種の浮力を得た自由でもあるし、同時に、わたしたちの時代の、未来の不安定さにもつながる心細い不安の心の様子を象徴することでもあるかもしれない。ここでこのまま着地するのか?、それともうかんだまま暮らしの手応えをつかまえようとするのだろうか?
この時代、足元の雪の上でアーティストと札幌で暮らすだれかは、この冬なにをするのだろう。
キーワード「生活」「共同作業」「札幌・北海道」「冬」「雪」「未来」
自由な浮力を携えたあなたの提案を待っています!
【応募要項】
■ スケジュール
レジデンス期間(60日間):2025年1月7日(火)~2025年3月7日(金)
アーティスト・トーク(プロジェクトの進捗共有): 2025年2月8日(土)
滞在制作活動の成果報告会:2025年3月初旬
■ 滞在・制作活動拠点
さっぽろ天神山アートスタジオ
〒062-0932 札幌市豊平区平岸2条17丁目1番80号(天神山緑地内)
*2月8日(金)に予定しているアーティスト・トークイベント会場は、SCARTSスタジオ
■募集人数 2人(組)
海外を拠点とするアーティスト1人(組)、海外での活動経験がある国内及び札幌市内を活動の拠点とするアーティスト1名(組)
■ 応募条件
1)国籍・性別・年齢不問、ただし学生の場合は大学院生以上
2)60日間のプログラム全期間において、自身の活動に集中でき考察・リサーチ活動など制作活動が行えること
3)札幌在住の人・団体・組織とのコラボレーションを前提にした、滞在中に行うプロジェクトおよび活動計画が提案できること
4)滞在中の活動記録をアーティスト自身で行うこと
5)プログラム期間中に主催者が計画するミーティング、プログラムに関連するアーティスト・トークに参加すること
6)プログラム期間中にさっぽろ天神山アートスタジオ館内で実施される交流会、イベントに参加すること
7)プログラムスタッフ、同時期滞在中のほかのアーティスト、地域・コミュニティとのコミュニケーションを積極的にとれること
8) その他、主催者の規定、施設の利用規約を守ること
【応募締切】
2024年8月31日(土) 23:59まで