開催情報
【期間】2026年1月27日(火)- 2月1日(日)
【開館時間】12:00~18:00
【休館日等】月曜日
【料金】無料
詳細:http://kunstarzt.com/Artist/HASHIMOTO/Rio.htm
会場
会場名:KUNST ARZT
ウェブサイト:http://www.kunstarzt.com/
アクセス:〒605-0033 京都府京都市東山区夷町155−7 2F
電話番号:090-9697-3786
概要
KUNST ARZT では、橋本梨生の初個展を開催します。
橋本梨生は、漆を用い、醜さと美の境界を模索するアーティストです。
「たとえ交わらなくても、(2025)」では、「傷と回復」をテーマに、反発する素材や、制作過程で自身に漆がかかりかぶれるまでの様を写真、映像、パネルを用いて表現しました。
「卓上にのらない腐ったものについて(2025)」では、金継ぎにより一つの塊が生み出されるまでの過程で生じるモノや記録映像を再構成しました。
工芸の「漆」というジャンルのアーティストではありますが、コンセプチュアルな視点からの活動を展開しています。
(KUNST ARZT 岡本光博)
アーティスト・ステートメント
私は、日本の漆工芸の中で培われた美の基準を「秩序」、そこから外れた要素を「秩序から反するもの=排除するべきもの」と仮定する。
それらを1つの作品に共存させることによって、漆工芸を人間の共感や拒絶の境界を探る手段として応用する。
プロダクトとしての漆工芸品の制作過程では、支持体の形を損ねることなく、漆を均一に塗る「塗り」と均一に研磨する「研ぎ」の工程を反復することが求められる。
凹凸が排除されたフラットな塗面を作ることは、伝統的な日本の漆工芸の質を決める指標である。
私はこのような価値観を「伝統=秩序」と捉えている。
メアリ・ダグラス(1921-2007)は 『汚穢と禁忌』にて、穢れとは秩序創出の副産物であると同時に、既存の秩序を脅かす崩壊の象徴であると位置づけている。
ここでいう「秩序」とは、生きていく過程で得られた文化的・慣習的経験から形成される、許容範囲や規律のことである。
つまり、穢れとは純粋な汚さではなく、私たちが許容できないもの、排除されるべきものを差す。
排除されるべき「場違いなもの」は相対的な価値観によってのみ存在する、非常に脆い概念である。
一方でダグラスは、儀礼や宗教的慣習において、穢れがしばしばの始まりや再生の象徴とされることを指摘している。つまり「場違いなもの」は、秩序崩壊の印とされると同時に「新たな秩序の予兆」として捉えられる側面を持つ。
これはヴィクター・ターナー(1920-1983)の『儀礼過程』における「移行期(リミナル)」と類似している。
両者は、既存の秩序が一時的に曖昧になる時、その自由な状態(境界的存在)が新たな社会的価値を創造することに言及している。
私の作品では、一般的に対称とされる美醜の感覚が共存し、分類できない曖昧な状態をあえて作っている。
これは、鑑賞者が主体的に美とは何かを吟味するための「場(コーラ)」の展開を試みるものである。
この実践の継続が、日常に潜む常態化した文化的、社会的価値の再認識と、漆工芸の新たな段階へ進むためのプロセスになると考えている。