東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)

 EN サイトマップ
© 2014-2024 一般社団法人HAPS

4人の現代日本の版画家-中林忠良・野田哲也・星野美智子・柳澤紀子

開催情報

【期間】2024年4月30日(火)~5月12日(日)
【開館時間】12:00~19:00(最終日~17:00)
【休館日等】月曜
【料金】無料 

会場

会場名:ギャラリーヒルゲート 1・2F
webサイト:http://www.hillgate.jp
アクセス:〒604-8081 京都府京都市中京区寺町通三条上ル天性寺前町535
電話番号:075-231-3750

概要

版表現の探究-現代日本版画家、星野美智子、中林忠良、野田哲也、柳澤紀子の差異と多様性

都築 千重子(東京国立近代美術館研究員)

 80代を超える今日にいたるまで、エネルギッシュな制作活動を続けてきた星野、中林、野田、柳澤の軌跡。この展覧会は技法への深い理解に立った表現の追求を継続してきた4人の個性の違いを一層明確に見せてくれるにちがいない。そしてこのヴァリエーションの豊かさは、現代日本版画の豊潤な実りの一端を示すものでもあるのだ。

 油絵から、「見えない思考や心の世界を映し出す鏡のような空間表現に自分を追い込んでイメージの表現だけに賭けようと決心し」て、モノクロ・リトグラフへと転じた星野は、アルゼンチンの小説家で詩人ホルヘ・ルイス・ボルヘスと出会って得たインスピレーションを糧に表現を深化させ、ボルヘスシリーズを発表する。変容してやまない、時に流動的、時に混沌とも見える光と闇が生む幻想的なイメージは、異次元世界に観者を引き込むかのようである。また、水と油の反発を利用した従来の技法から、水を使用せずにシリコンを用いて制作するウォーターレス・リトグラフにシフトしたほか、近年はデジタル・リトグラフにも挑戦している。

 一方、詩人金子光晴の「すべて腐らないものはない」という言葉を信念に、腐蝕銅版画を制作する中林。はじめ社会や時代との関連が強い作品を発表していたが、渡欧から帰国後、自らの足元を見つめ直し、眼前の現実と向かい合おうと始めたのが、1977-78年の〈Position〉〈転位〉シリーズ。枯れた芝草などを即物的に原寸コピーした原画をもとに作った版を銅版に転写、さらに手描きも加えて生み出された手触り感のある銅版画。近年は森や水辺など自然への視界は拡がり、光が際立ってきている。詩情は抑制され、自然の素材感やリアリティを失わない、理知的に構成された濃淡のモノクロームが織りなす画面には、生と死、光と闇や時のうつろいなどを想起させるイメージへの変容も読み取れよう。

 同じく、自分の立ち位置を起点に制作するのは、「もっと足もとをみつめ、身近な自分の生活の中に素材をもとめ、日常の記録を通じて芸術を考えてみたいと決心したのである」と語る野田。1968年の第6回東京国際版画ビエンナーレ展で国際大賞を受賞し一躍脚光を浴びた。家族や知り合いの姿、身のまわりの風景といった、作者の心を掻きたてた自らの日常をモチーフに、写真と版画の技法を併用した「日記」を一貫して制作している。写真から不要な部分を消し、手描きを加えて版画化することで独自の表現性を獲得。余白が効き、知的な緊張感や清澄さを有しながらも、柔らかい色調と和紙の風合いとあいまって穏やかな詩情を漂わせている。

 インドの火葬場で眼にした体験、チェルノブイリや福島の原発との対峙といった社会的な関心が、人と自然の根源的な関係性に対する深い思索に結びついている柳澤。鳥や犬、狼などの動物、水や樹木、アンモナイトや翼、舟が登場し、これら単純化され、断片化されたモチーフと人間とが共存する原初的風景が立ち現れる。時に孤独や恐れ、傷みを感じさせながらも、鮮やかな色彩と腐蝕が織りなす陰影の諧調の効果とあいまって、人と自然をめぐる詩的な神話に昇華されている。
(2021年東京日動画廊における「現代日本の版画家4人展」カタログより抜粋)

夜話市民講座(ギャラリートーク)
中林 忠良・野田 哲也・星野 美智子・柳澤 紀子  (版画家) 
「それぞれの仕事」
5/4 (土)  18:00〜20:00
参加費1,000円(学生500円)定員35名(要予約) ギャラリーヒルゲート1F

関連記事



HAPSについて | アーティスト支援 | アートと共生社会
お知らせ | 相談・お問い合わせ | アクセス
サイトマップ | プライバシーポリシー



JP | EN

© 2014- 2024 一般社団法人HAPS