Exhibition Review

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2014.04.23

皇室の名品 ―近代日本美術の粋 /京都国立近代美術館

京都国立近代美術館

2013年11月19日(火) - 2014年1月13日(月)

レビュアー:奥山佳子


川合玉堂「雨後」

後半日程に出かけた。

川合玉堂「雨後」

左側、空にかかった虹が思わず声が漏れ出たほど美しい。右側の雨上がりにけむった木々も生き生きとしている。

自然の景色を堪能しながら目は1点でとまる。絵の下方、真ん中やや右あたりの岩陰に隠れるように描かれた2人の人間だ。蓑と笠をまとい手漕ぎの小舟の上で何か作業している。雨が上がったので舟を出して魚をとりにいくところなのか、網などの漁具の手入れをしているのか。

圧倒的な自然の中で人は小さい。しかしこの絵を目にした時、「愛」という言葉を感じた。この作者はこの「人」を愛している。何故だか分からないのだが理屈でなく伝わってきた。人はこの小さな大きさでなければならなかったと感じる。人も自然の一部だからという大前提とあわせて、彼らへの愛が余りにも大きく伝わってくるからだ。

違う絵に関する音声ガイドの説明で、この画家は「自然を愛した画家」というような説明がなされていた。

そうなのだろう。

この自然の風景の絵は素晴らしい。

そしてそれ以上に、雨上がりに黙々と働く人に対する大きな「愛」が心を打った。

美術に関することの物の知らなさに私は劣等感を持っている。美術品を見ても何も分からないことがほとんどだ。

そんな私にもこのように伝わってくることがある。

雨上がりのひんやりとした空気が頬に感じられたということは、一瞬でも絵の中に入りこんでいたのだろう。

画家というのは大変な仕事だ。絵が上手いのは当たり前。その上で言いたいことを伝えなくてはいけない。言いたいことは何もなくて、ただ自分の絵のうまさ、高い技術を見せるだけの絵を描いても、見る人の心を打たない。

それを言えば作家や音楽家なども同じなのだが・・・。

芸術家が登っている山は私たちが思う以上に険しくて、はてがない。

雨の名残を孕んだ空気の感触、見上げた空にかかった虹、岩陰に見える働く人の蓑と笠・・・。

風の微かな音とともに心に残った。

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