Exhibition Review

2013.06.05

HAGAKI Party/後素堂ギャラリー

後素堂ギャラリー

2013年3月15日(金) - 2013年4月21日(日)

レビュアー:松川佳世




騒々しく無音なパーティーへようこそ!


桜の花弁を散らす激しい雨の降る中、私はあるパーティーへと向かう。数寄屋造りの民家や工房といった何処となく京の趣ある通りを歩いていくと、程なくしてガラス張りのギャラリーらしき建物が見えた。上を見上げると日本画材専門店『後素堂』の看板が、そして入口には『HAGAKI Party』と書かれた置き看板を目にし、ここだと確信した後、ガラス扉をそろりと開けて中へと足を踏み入れた。たぶん五畳ほどのスペースだろうか。そこにあるのは壁という壁のいたる所に、騒々しいまでの個性的なハガキサイズのアート作品が点在し、私のほか誰もいない。しばらくすると、二階から画材屋のおかみさんらしき人が降りて来て「ゆっくり見てやってくださいね。」と一言声を掛け
ると何処かへ消えてしまい、再び私はその異空間へ放置されることとなった。
『HAGAKI Party』の企画者であり、自らもアーティストとして活動している天野萌氏が、アートシーンの活性化やアートに興味のある人同士の橋渡し的役割を担っている。今回の企画もプロアマ問わず作品を募っており、隔たりなく参加することの意義を改めて考えさせられる。様々な画材で描かれた平面作品の他、立体的に表現した光島貴之の「水ぶくれ1~9」は、9枚のハガキサイズそれぞれにペットボトルのような素材を立体的に貼付、水風船を思わせる涼しげな色彩で9つの水ぶくれを表現している。また、KANO SHOKOの「生まれ続け失い続ける」は、4枚のアクリル板それぞれに色とりどりの無数のニコちゃんマークが描かれているように見えるが、その表情は絶望感、失望感に喘ぐ表情に見てとれ、4枚のアクリル板を重ね合わせていることで奥行きが生まれ、おどろおどろしいまでの顔が浮かびあがる。しんと静まりかえった空間には、賑やかな感性がおしゃべりなまでに飛び交い、ひととおり鑑賞し終えた私は、この不可思議なパーティーを後にした。

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