Exhibition Review

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2013.03.22

あさき夢みし 上野憲男展

上野憲男

何必館・京都現代美術館

2013年2月22日(金) - 2013年3月20日(水)

レビュアー:松川佳世




マグマのような血潮の音が聞こえる


閑寂とした和室の床の間に魯山人の花瓶へ簡素に生けられた花。侘寂を感じる空間に原色使いの意志を放つ抽象画が一枚、和の空間にしっくりと溶け込むように飾られていた。何故こんなにも違和感なく思うのだろうか。その謎を探るべくしばらく私はその場に佇んでいた。
そう、ここは京都の老舗店が軒を連ねる祇園商店街の並びにある『何必館』という美術館で開催されている「あさき夢みし 上野憲男展」での和室に設えた展示室の一コマである。画面全体をブルーグレーで塗りこめていく従来の技法である作風も展示会場の中に点在してはいるが近年、原色へと進化した新作が大半を占めている。雪景色を思わせる作風から春の息吹、真夏の太陽、中秋の名月を思わせるような四季折々の色鮮やかな作風へと変化していったことで、より見る側のイマジネーションをかき立てられる。
鑑賞後、たまたま当美術館を訪れていた上野氏にバッタリ会い、その変化の鍵ともいえる本展の見どころ『UENO BOX』を前に貴重な話を伺うことができた。
20センチ四方の箱型キャンバス(BOX)に、日々感じた想いを描き積み重ねていくうちに、自ら課した作風へのこだわりから解き放たれ、より自由に表現できるようになったのだと語る。また、そのBOXを白い壁の端から端まで小気味良いリズム感で羅列したことで、偶然にも上野氏の年齢の数である81つ並んだというのも興味深い。
冒頭でも触れた一見ミスマッチともいえる原色使いの絵が、何故こんなにも違和感なく和室に溶け込むのだろうか……という疑問を、上野氏へぶつけると「やはり日本人の血というものが流れているからだ。」と力強く語った。なるほど抽象画とはいえ、闇夜を照らす月をイメージしたような構成からは、日本の風土を感じ生きてきた証というものを気高いまでに感じとることが出来る。またところどころに展示されている肉筆による詩からも、81年間生きてきた上野氏のこれからも挑戦し続けていく強い意志が伝わってくる。

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