Exhibition Review

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2013.02.22

生誕100年記念写真展 ロベール・ドアノー

ロベール・ドアノー

美術館「えき」KYOTO

2013年1月30日(水) - 2013年2月24日(日)

レビュアー:サカナキミエ




生誕100年記念写真展 ロベール・ドアノー
「どこか旅に出たい」。疲れた心にぶらさがる欲望は、ロベール・ドアノー写真展にてひとたび満たされることとなる。そこには旅の醍醐味が詰まっている。異文化の覗き見、人との出会い、クスッと笑えるハプニング・・・。それ以上に、旅行レベルでは見えないパリの日常を味わうことができる。パリに暮らす写真家なのだから当然と思われるかもしれない。だが共に旅するような気分で鑑賞できる作品と出会うのは、旅行中にパリジェンヌの日常を体験することと同じくらい難しい。ドアノーはそんな難問をさらりと解き、私たちをパリの街へと連れ出してくれるのだ。
写真に写る世界を旅するにはまず好奇心と想像力が必要なのだが、それらは写真家への信頼と愛情なくして生み出されない。つまりこの人の案内で旅をしたい、と思えること。難しくも嘘臭くも聞こえるが、この度の展示で写真家を好きになることは容易くかつ自然だ。展示一枚目、鏡越しに自らを撮影するドアノー。彼の引っ込み思案な性格が浮き彫りにされる。そんな写真家との対面を経て次の作品の前に立つ。すると顔を伏せてカメラを覗く写真家の姿が、画面のこちら側に浮かんでくる。捕えられた被写体は遠く小さく、殆どの目がカメラと合わない。何とも遠慮がちな距離感、見守るような視点。こんな写真家応援せずにはいられない!
私たちはカメラを構える写真家の横に立ち、寄り添うように写真の中の世界を回遊し始める。臆病な写真家の成長と共にカメラは被写体に近づき、私たちもパリの街に迫る。演出されたショットは虚構ではなくパリらしい日常の再現だ。日常から切り取られた宝物のような瞬間は日本人の私にも共感でき、パリの実態とともに人の普遍性をも垣間見ている気持ちになる。パリと人に対する写真家の愛情が画面いっぱいに広がる。私たちはその鋭い着眼点に驚き、ジョークに笑い、愛情に温もる。いつの間にか、ドアノーと彼の案内するパリに恋をしているのだ。
展示が終わる頃には旅を終えた時の充足感と、彼のそばを離れがたい名残惜しさでいっぱいになっている。どこか旅に、それもドアノーのようにユーモラスでセンス溢れる人と一緒に・・・。美術館を出た足はそのままカフェへと向かい、旅の余韻にどっぷりと浸ってしまう。

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