Exhibition Review

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2017.02.15

吉田桃子展 scene UKH ver.2

吉田桃子

波さがしてっから

2017年2月8日(水) - 2017年2月19日(日)

レビュアー:渡辺育 (27)


 

「漂う残響」

男が、あるいは女が、光を浴びながらどこかを見ている。それはこちらでもないしあちらでもない。彼らの眼は何かを捉えようとしている。圧倒的に無感覚なその眼で。それでもやはり、その眼はいつも焦点を欠くことになる。何かを希求していながら、自らの置かれているその得体の知れない場所のなかで、涙さえ浮かべられずに。彼らは、あるいはそれを観る私たちはどこにいるのか。その世界に救いはあるのか、わからないが、ある種の恍惚ならある。揺れ動く光の中で、私たちはその音を聴くのだ。

吉田桃子の個展が、東九条のインディペンデントギャラリー「波さがしてっから」にて行われている。東福寺からほど近いこのギャラリーは、建物の一階駐車スペースをギャラリーに改装し、1980年代生まれの若手アーティスト・キュレーターの三人によって運営されている。筆者が初めて吉田の作品を目にしたのは2014年の京都市立芸大の展覧会においてであった。淡い光の満ちた空間の中、あるいはどこか特定の情景の中に、虚ろな眼をした男女が佇んでいるのを2メートルを超える大きなキャンバスに描くというスタイルは当時から確立されており、それらを額装せずにそのまま貼り付けて展示する。パンキッシュで力強く、それでいてどこまでも醒めていて静謐という不思議な印象を受けた。作家のステートメントには当時から「音楽とそれによって脳内に生成される動くイメージとの連関、それらの情景の絵画化」という主題が提示されていたが、それは基本的に現在も変わっていない。作家曰く、最近はそれらの間に実際に映像を撮るというプロセスが加わっているらしいが、それについては展覧会場のキャプションに詳しい。吉田がどのような種類の音楽からこのような世界を紡ぎ出しているのかは明記されていないが、私たちは彼女が固定した絵画によって、それのもたらした高揚とその残響を今一度聴き取ることができる。それは彼女にとって、そして私たちにとっても、ここではないもう一つの世界からの音楽だ。

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