Exhibition Review

13_2017

2017.12.27

アリン・ルンジャーン「モンクット」

アリン・ルンジャーン

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA

2017年10月28日(土) - 2017年11月26日(日)

レビュアー:植松由希子 (35) 会社員

「モンクット」は複製をめぐる展覧会である。王冠などが並ぶ1階展示スペースの奥の壁に見栄えのする絵画がある。解説には、「《シャム王国大使のナポレオン3世の謁見1861年6月27日》1864年の複製画」とある。年月日と年号と複製という言葉の重なり方に、混乱してしまった。だけどその混乱は、この展覧会のキーワードそのものなのではないか。

 絵画は1861年6月27日の出来事を、フランス人の画家が1864年に描き、2017年にタイ人の画家が複製したものだ。その元になる出来事は、2階で上映されている映像で、より詳しく説明がされている。映像は2つのパートに分かれている。パリの美術館の学芸員のフランス語の語りにより、謁見の出来事には、タイ王国大使とナポレオン3世のそれぞれの政治的思惑と風習のちぐはぐさに、曖昧な外交という歴史の一端があった事を浮き彫りにする。歴史的事実にフランス側の視点とタイ側の視点が交錯する。あたかも1864年フランス人画家が描いた絵画の意味付けに、2017年タイ人画家が複製した意味付けが加わるように。
 続けて映像は女性の語るタイ語の語りが続く。女性はラーマ4世の子孫で、舞踏の仮面や冠を作る職人である。彼女は「本物のチャダー」という言葉を頻りに使う。「チャダー」は「複製の王冠」という意味である。1782年に作られ、1861年にラーマ4世によって複製された王冠の事を指す。彼女が複製するための、偽物の本物である。本物のチャダーはパリにあり3Dスキャンによりデータ化されている。それは絵入り新聞の挿絵の様に容易にコピーが可能である。しかし、女性は伝統的な手作業のやり方で、チャダーの複製である王冠を2015年に作り上げる。

 2015年の複製の王冠と映像を中心とした展示に、今回2017年の展示には、複製の絵画と新聞挿絵のコピーが新たに加わった。「モンクット」にまつわり、複製されていく作品は、それ自体が、またひとつの事実となって、何重もの視点と意味付けを生み出していく。その重なりは、歴史的な出来事に、現在進行形の普遍性をもたらす。
 映像の語り手の2人はそれぞれの冒頭、自分の生年月日をいう。歴史上の出来事も個人の生年月日も、同じ数字の並び方をしている。ただの数字は、永遠に意味付けからこぼれ落ちるものでもあり、歴史と個人を自在に結びつける唯一の要でもある。
 2017年11月2日現在、それらの展示を日本で見ることが出来る。

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