Exhibition Review

2022.03.15

みうらじゅん マイ遺品展

みうらじゅん

大山崎山荘美術館

2021年12月18日(土) - 2022年3月6日(日)

レビュアー:山際美優 (22) 大学生


 

みうらじゅんマイ遺品展。大山崎山荘美術館は、昭和の匂いのプンプンする、懐かしくも愛らしい、いやはや何とも憎らしい品々で埋め尽くされている。「私が民藝みたいなものですから」と氏はいうが、柳宗悦先師が聞かれたならば、「否、あるまじき」と一刀両断されるだろう。というのも、ここに並べられた氏の遺品たちは、民藝というにはあまりにキッチュでいささか軽薄である。しかし、幸か不幸か、宗悦先師は天国で黙しておられる。されば、みうらじゅん氏の豊かな黒髪の乗る肩をそっと持つこととしよう。きっとこれは民藝なのだ。
 
「私が民藝みたいなものですから」とは、展覧会場に設置された液晶画面から流れるビデオメッセージ内で語られた一言である。「マイ遺品」展と銘打たれた本展であるが、もちろんビデオに映る氏はピンピンされているし、当然物理的に肩を持つことだってできよう。「マイ遺品」として出品されたのは、氏が少年の頃から収集した仏教関連の小品、自作の漫画、日本各地のおかしな土産物、下世話な雑誌や広告のスクラップ、怪しい電話番号が記された冷蔵庫マグネットなどなど、枚挙にいとまがない。氏が「いやげ物」と呼ぶそれらのイトマガナイ品々は、「用の美」には収まらない「無用の長物」的美が我々を圧巻し、終始ニヤニヤさせてくれる。
 
とはいえ、氏が「民藝」の名を出すのも謂れのない話ではない。大山崎山荘美術館の所蔵品は、ビール王と称されし、今のアサヒビールの初代社長を務めた山本為三郎の民藝コレクションからなる。そもそも民藝運動を先導した宗悦先師は大の蒐集家である。その名も「蒐集について」と題した文章のなかで、「この世に蒐集を好む者はいたく多い。私もまたその一人である」と、告白しておられる。そしてまた、「蒐集は心理的には興味であり、生理的には性癖である」と、記されているのを見るに、両氏は同じ性癖を共有しているらしい。そういえば、宗悦先師は「下手(げて)」と蔑まれるような雑器を好まれておられた。
 
だが、ビデオメッセージ内でのみうら氏は、自身のコレクションを常設展にしてはどうかと、大胆な提案をしておられる。ここでも宗悦先師のお言葉を。「蒐集は私有に生い立つが、進んでそれを公開し、または美術館に納めることは一つの美拳である。」なるほど、これが日本民藝館を建てられたご趣旨なのかもしれない。今や断捨離ブームである。ミニマムに丁寧に暮らすことをよしとする風潮があるようだ。しかし、ここに集められた「下手」な品々は、なにやら妖気を帯びてきている。それは人々があえて省みることのなった雑多な品々を、蒐集し、保管し、公開することによって熟成された妖気である。ああ、これは民藝なのだ。愛すべきいやげ物たち、みうらじゅん美術館創設を急ごう。
 

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