高橋耕平氏の作品とご本人の作品のプレゼンは過去に二度見る機会があってその度に気が狂いそうなストレスで内蔵や精神の状態が悪くなる様な経験をした事があって「なんでこんな人を不快で不安にさせる作品を作るんだ!?」と思っていたし伝えたこともある。
「もうこの先、人生の一秒も高橋耕平の作品には費やしたくない」とまで思った私が今回の個展に足を運んだ訳は意外とあっさりでtwitterで読んだ今回の個展の感想に「いままでの作品と違う」「凄く良い」「美術館に所蔵して欲しい」ってゆうのがあって、その変化を確かめてみたかったからなんだ。レビューとか感想って大事だね。
それでその高橋耕平という既知の「美術作家の個展」に行ったら、スクリーンに映された「映像」とそのスクリーンの裏側に貼り合わされたとっても立派な「年表」が「一枚」置いてあっただけだった。
結果的に、最終的に、私にはこの高橋耕平氏の作品が、今年のジブリアニメの新作2作品よりも面白かったし、他人の作品というわけではなく、自分達自身の作品の様に取り上げるべきだとも今はおもっている。今年私に一番面白かった映画は「立候補」(あなたはみた?)。京都シネマでは「ベニシアさんの四季の庭」が大ヒットだったらしいが映画業界は全般的に厳しいらしい。果たして「はらださん」は「ギャラリーパルク」のベニシアさんになれるだろうか?話題が話題を呼んで京都現代美術界空前の大ヒット個展となるだろうか!?
私は集客力の無い京都街角現代美術界のもっとも熱心な応援者の一人「はらださん」を取り上げた「TAKAHASI-san」を取り上げる吉野正哲個展をここHAPSレビューギャラリーで開催することにした。そうすればきっと今度は現代美術作家ハップスさんが「YOSINO-san」を取り上げてくれて、今度は、それらを読んだあなたが「HAPS-san」を取り上げてくれたら遂にはあなたをクローズアップ現代美術さんとかパラソフィアさん(知ってます?)が取り上げてくれるに違いないと思いこの現代民衆美術鑑賞オリンピックの聖火を消さぬようリレーを始めた次第です。つまりこれは「始めました」の「リレー(ショナル)アート」です。
驚いた事にこのドキュメンタリー映画「HARADA-san」は、画面にまさかの「詩情」の様なものが漂っていて、台詞もなく演技もない「平日の昼間」がのんびりと記録されている。
これは地味な詩情なので気のせいみたいなものの一種にも数えられる様なモノともいえるけど、もしかしたら、世界の暇人の賢人みたいな人から見たら人生の一番の宝物なのかもしれないと思う。
なんてったって、人生の起きてる時間の大部分は「平日の昼間」なのだから。
ただこの詩情の姿をした「無形文化財「平日の昼間」」は危険な宝で、失業状態にある時にしか手に入らないから一般的には誰もそれを欲しがらない。たまに種田山頭火とか高田渡とかそうゆう詩人みたいな人が手に入れて詩にしたりして平日の昼間の危険な魅力を忙しい社会人に教えてくれる。
暇と失業と詩情は密接に関係していて「HARADA-san」の画面いっぱいに広がっている。その空気を引き連れて、はらださんが自転車を漕ぐ、話しをする、煙草を吸う、立ち止まる、腰掛ける。暇全開。
そんな映像を一人で鑑賞していたら、知人のS君がぶらりやってきて鑑賞席の畳にごろんとする。彼も平日は働いてない。
雑草や道路と雑木林を区切る黄緑色の鉄柵や、鬱陶しそうな夏の暑さや、競輪で小金をスったはらださんの、冴えない日常の情景があちこち俳句。なんかそれをぼんやりみてしまう。星野道夫が人のいない動物だけのアラスカの「世界」を撮ったみたいに、高橋耕平は仕事のない平日の昼間の京都の「世界」を撮った。
そして素晴らしいことに高橋耕平氏はそのスクリーンの裏側を「はらださん」の見事な年表で飾った。この事は非常に美しいと思った。手間暇がふんだんにかけられた「はらださん」の年表。
恥ずかしい事も酷い事も辛い事も輝かしく誉れ高い事も全部「平日の昼間」の裏側のはらださん。どれだけ世の中で人が互いに無関心を装おうとしても高橋耕平氏はそうゆう風潮に飲み込まれずに「はらださん」に関心を示し関心を持続させちゃんと作品にまとめ上げた。これはひょっとすると、巷のサンタさんがすっかり忘れてしまったこの世のどこかに存在するというあの「プレゼント」ってやつではないか!?
今回、鑑賞者であることの作家に劣らぬこの世での存在価値を1文字1文字打ち込んでゆく文字起こし運動にさりげなく先陣切って参加してみせた高橋氏。あのでっかい、キレイな年表の「文字起こし」とレイアウトを仕上げた実力は既に気合十分と感じた。高橋氏が次にどんな相撲を取るか、じっくりと楽しみである。
メリークリスマス
高橋耕平氏の今後の予定をチェック!!
京都芸術センター「作家ドラフト2014」・高橋耕平「史と詩と私と」開催。会期2014年2月8日~3月9日。
http://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000159987.html