本・本・本。ギャラリーの白い壁に、面出しでずらりと本が並んでいる。(面出しとは、書店で言う、本の表紙側を客に見せて展示すること)
本といっても、これらは市販の本ではなく、作家オリジナルのブックアート・手作り本・製本などの「手製のアートとしての本」なのである。今回は169人・組が参加しているとのことだから、169冊のブックアート作品があるということになる。そのほとんどが世界に1冊しかない本である。それが、正面の壁にも、右の壁にも、左の壁にも。観客は、それを手にとって読んでみることができるようになっている。内容は、絵本や画集、写真集など様々だ。ファンタジーから社会問題まで、テーマも多岐にわたる。しかし、ブックアートが盛んになっている今、この展覧会が独特なのは、この点だけではない。
棚の下には、白い長い台がしつらえてあるのだが、そこには大型の本だけでなく、本をテーマにした立体・半立体の作品が展示されている。一見普通の辞書だが、持ち上げると中から水音が聞こえる作品。「高瀬川」の文庫本を刃物で切って、舟や川を作った作品。シュレッダーにかけた本から本物のきのこを生やした作品。箱の中に桃の実をかたどったオブジェを入れ、桃の中に桃をめぐる1シーンのジオラマが入っている作品……など、形を変えても本とつながりがあることは伝わる作品から、本をテーマとするこの展覧会でなければ、およそ本とは思えない作品まで、さまざまなブックアートが展示されていた。
大規模なグループ展だが、雑然とした印象はない。それは、大半の作品の「本」という形式に依るところが大きい。本の形をとることで、統一感が生まれている。そして、1冊の本を選んで手にとって開くと、本の中に広がる個々の作家の世界に没頭することが出来る。1点の作品を見る時間は平面や立体のグループ展より長くかかり、筆者はすべての本を読むのに4日かかった。
この展示空間、すなわち「図書館(THE LIBRARY)」に身を置くと、表紙や製本に凝った作品が目を引くが、表紙が地味でも、読んでみると作者の世界に引き込まれるような本もある。非常に興味深い本もあれば、筆者の感性には合わない本もあった。しかし、その多様性こそが、この中に少なくとも1冊は心に響く本があると信じさせられる力となっている。それを可能にするのは、本というテーマに秘められた、表現の幅の広さだ。
この、アートとしての「図書館」は、本の可能性や、本によって引き出されるアートの可能性について考えさせられる展覧会である。
本展は、来年も本の作品を公募し、京都で展覧会が行われることが決まったという。更なる発展を期待したい。
2015.04.11
THE LIBRARY in KYOTO/MEDIA SHOP gallery
MEDIA SHOP gallery
2015年3月17日(火) - 2015年3月22日(日)
レビュアー:堀博美