路地裏にあるARTZONEを訪れると、ガラス張りの展示会場は作りかけ/準備中の様相を呈していた。
事前にHAPSのウェブサイトのART Picksに掲載されている展覧会情報でどのような内容であるのか知っていたため、さほど驚きはしなかった…というよりも、展覧会コンセプト(http://artzone.jp/wp-content/uploads/2015/01/Installing.pdf)に魅かれたことが足を運ぶきっかけとなった。
率直な感想として、公開搬入自体を展示の対象とする行為自体は大変魅力的に見え、意欲的なチャレンジングな展覧会であると思った…が、いくつかの疑問点も頭をかすめた。
その疑問点とは、公開搬入を展示対象ととらえた場合、展覧会の完成/インストールが終了した時点で対象(公開搬入)は消え失せてしまうことになる。つまり、展覧会を完成させない状態/永遠に終わらない搬入(作業)を展示し続けないのであれば、展覧会コンセプトの内容に齟齬を来してしまうのではないか、と思うのだ。
また、それと同時に展覧会の完成させるために搬入(という行為)は存在するため、展覧会を完成させないための搬入(という行為)はもはや搬入と呼ぶことすらできないのかもしれず、永遠に始まらない展覧会/永遠に終わらない搬入も、語義からすると正しくはないのかもしれない。
そのような矛盾も孕みつつ、展覧会と搬入の主従の逆転には問題提起をありのまま提示していることは安易な答えを挙げられるよりも誠実さが感じられた。
変容し続ける現場にはあらゆるリミットがなく、どこまでも発展していく可能性を秘めているという意味合いでは、ある種のユートピアでありうるが、いつまでたっても完成を迎えることのない終わりのない作業はディストピア性を兼ね備えており、2つの両極端な彼岸が同居していることも面白みのひとつであろう。
この二重のパラドクス/ジレンマに対する答えが、公開搬入の終わり=展覧会が完成することで解消/何かしらの意見の提示があるかどうかは与り知らないが、肯定的な意味合いを込めて本展の終わりが待ち遠しい限りである。