Exhibition Review

2019.05.18

京芸 transmit program 2019

黒川岳、寺岡波瑠、本山ゆかり、山本真実江

京都市立芸術大学ギャラリー

2019年4月13日(土) - 2019年5月19日(日)

レビュアー:金山忠司 自営業


 

 グループ展はこれまで何度も観ているけど、作品のバランスというか、展示作品同士の相性が合わないと、せっかく個々の作品は良いのに全体の印象がボヤけたものになる場合がよくある。つまり、これまで自分が観たグループ展では、個別にいい作家と出会うことはあっても展示全体としては何か統一性に欠けて今ひとつという印象の展示が多かった。

 @KCUAでの「京芸transmit program 2019」も色々な分野の作家の展示なので、全体としてそんな印象の展示かと思って覗いてみたのだが、良い意味で裏切られる展示だった。

 まず目が行くのが寺岡波瑠さんの作品、列柱と題された作品群が、ちょっとだだっ広い@KCUAのギャラリースペースを適度に分断して、空間としての締まりが出ているように感じた。その寺岡さんの作品の周囲に配置された山本真美江さんの陶芸作品が幻想的な雰囲気を会場全体に与えるものになっている。 そして山本さんと寺岡さんの作品配置によって、作品の間をくるっと廻るという回遊性が生まれているのが鑑賞者として心地良い。

 その周囲を埋めるように展示されている本山ゆかりさんの絵画作品。彼女の作品群はこの空間に佇んでいるという感じで、強く主張はしていないが、存在していないと空間が締まらないという意味で補完的な作品となっている、かといって作品自体はそれほど弱いものでもないというバランスでこの空間に存在している。

 続く2階の展示でも寺岡さんの作品が空間を仕切っているのだが、それらと向かい合ってある黒川岳さんのでかい作品もインパクトがあって良い。太鼓は叩いてもいいらしく、ちょっと叩いてみたが静かなギャラリーに音が響くのは良い感じである。パフォーマンスもあるらしいので、それも体験してみるのも良いかもしれないと思った。

 この階には、寺岡さんのアニメーション作品もあって、実はこれがこの展示の肝なのではないかと言うくらい、とても良い感じの雰囲気を醸し出しているのだが、ひっそりと展示されている感じがまた良かったりする。作品そのものだけでなく、空間をどう作品化するのか、どういう風に作品を体感させるのかによって作品全体のイメージが変わるのかがよくわかる展示であった。 ぜひ実際に体験してほしい展示だった。

Pocket