光のさす階段を上がって2階。京都大学博物館の一画で、戦後70年特別展が開催されていました。会場には今展覧会の主催の一員である赤十字国際委員会が所有する、戦下での捕虜や民間人を被写体とした写真・映像が並んでいます。
今展示では、「戦争」というもののいくつかの側面に静かにスポットライトが当たり、そこで照らし出された側面は、今まで私の中ではっきりとは認識されていなかった戦争の一面でした。
戦争、捕虜、収容所という言葉から、どのようなことが連想されますでしょうか。私は飢えや辛い労働といったイメージでいっぱいでした。しかし、今展示はそのイメージを強化するものばかりではありません。もちろん収容所の中、汚れた毛布にくるまる人々がこちらを見つめる写真もあります。けれども、いくつかの写真の中には笑顔も見られ、捕虜が収容所の中で体操をしたり、宗教行事を行っている姿もありました。
写真横の説明板には「中立」「人道」といった言葉が並んでいます。戦争に何らかの形でかかわる以上、赤十字国際委員会が「誰の味方なのか」を問われてきたことは容易に想像がつきます。しかし今展示を通し、戦争の是非についての判断は保留し、戦争が現に起こる中で、戦火にさらされる弱者を保護、支援していくことに集中してきた赤十字国際委員会の立ち位置が無言のうちに感じられました。過去の戦争の悲惨さは記録から推し量れます。その圧倒的な悲惨さの中でできることを淡々と続けてきた人々の姿は、写真にこそ映りませんが、捕虜のわずかな笑顔を通し、みることができました。そこには見えないからこそしみ出してくる、人間から人間らしさを奪わせないという凛とした強い決意が感じられました。
「戦後71年」という新しい段階に入った今年。歴史を振り返ることで、戦争にまきこまれた時にどう生きるか、今戦争の影響を大きく受ける人々の権利をどう奪わせないのか。考えるきっかけになりそうです。