nazeさんのdokomadeikunoには2回ほど行った。でもその時の私の調子とその日の天気、時間帯、誰と行ったかとかが全然違って、その偶然みたいなんは一体何やったんやろうと今でも不思議に思っている。
1回目はもう本当に最悪のタイミングでいった。少し落ち込んでいる私1人だけでカラっと晴れた日にふらふらvouに入ったら、たくさんの楽しそうなカップルや友達同士のグループがわいわいしてて、おまけになぜか中華料理みたいなニラみたいな匂いがおしゃれなvouに漂ってて楽しそうな人を見るだけでも滅入ってしまって、匂いも邪魔してくるし、畳の部屋にnazeさんの作品飾ってあるけどマーチンのブーツ履いてっちゃったしで、もう最悪も最悪だった。だから1回目はとにかく逃げるようにして帰った。
2回目は友達と会ってて急遽、亀岡から河原町まで出ることになったちょっと蒸し暑い夕方だった。友達のYちゃんと突然出来た用事にうきうきしながら電車に乗って、でも用事までちょっと時間を持て余してしまった時に、どうしようかと言いながらなんとなくvouに立ち寄った。私たちの共通の友人へのプレゼントを2人で物色していると、薄暗い2階からぬうっと、これまた共通の別の友人Tくんが出てきてびっくりするぐらい大きい声を上げてしまった。今思い出しても本当に妖怪みたいにぬるぬる出てきたTくんと、びっくりしたままのYちゃんが2階のnazeさんのピンボールをするのを見守っていたのだけれど、人んちの2階の薄暗いなかでするピンボールってなかなか変で、面白かった。
しかし2回目はこれだけではない。私はうっかりnazeさんが作ったピンボール台を覗き込んでしまったのだ。そこには信じられへんぐらいいっぱいキャラクターが描いてあって、そのどれもに苦しくなるぐらいの描き込みがしてあったのだ。ぱっと見て可愛かったりポップに見えるその絵達は全員狂っているようにしか見えなかった。薄暗がりで発光するその体にはっつけた編み目や、肌の塗り込みを見てしまったら最後、すごい力でどっかに連れて行かれそうになって私はぎょっとしてしまった。さっきまであんなきゃっきゃ遊んでたピンボール台がとてもとても怖くなってしまったのである。なんやこの機械。絶対ヤバいぞ。普段は絶対働かんはずの野生の感が全開で走りまくって、ふと台の隣を見たら顔のついたサボテンがこっちをみてる。そして怖いのにまたじっくり見てしまってドキッとしてしまう。だってそのサボテンの針は裏返しのミトンを突き破った、たくさんのごつい釘で、そのピンピンの先っちょが全部こっちを見ているサボテンだったからである。キャラクターとしてそこにおるけど、ミトンを釘が串刺しにしたくっている体の持ち主がこっちを見ている。周りは薄暗がりで、ゲーセンの小さな明かりが”じっっじじっ…じじっ…”と光っている。どうしよう…なんやろここ…と思ったとたん部屋のお香の匂いが心無しか一気に濃ゆくなったきがして、どんどん空気が湿気てきて、先に1階におりた友達を急いでおいかけた。
これはあくまで私の想像なんだけれど、nazeさんは夜にものを作っているんじゃないかと思う。2階で私が会うてしまった何か分からんのは、夜、特に妙に目が冴えてしまって、誰も起きている気配のしない夜中に、たった1人でいるとめちゃくちゃ怖くなる時のたまらない感じの塊みたいに思える。昼間に思い出すと何でもないんだけど、夜中というのはどうしようもなくて、今ここに居るということが恐ろしくて仕方ない。普通やったら朝が来てお日様が昇ればリセットされるはずのその気づいたらあかん出来事の中にnazeさんはなぜかは知らないけれどずっといるんじゃないかな?と思う。そんな怖いことあるやろうか?寝ても覚めても終わらんし、いつか終わるような種類のものなのかもわからない。nazeさんはどこに向かって進んでいるんだろう?濃ゆい濃ゆい夜が終わって、お日さまがのぼる朝にnazeさんが出てきたらいったいどうなんねやろう?それはこの人にとって良いことなんかな?などなど考えだすとグルグルしてしまう。次なにか展示をされる際には是非足を運ぼうと思っている。この人次どこにいくんやろう?と気になって仕方ないから。