Exhibition Review

2015.03.12

Overlap

岸本倫子、塩谷啓悟、山本友輔

MEDIA SHOP gallery

2015年2月24日(火) - 2015年3月1日(日)

レビュアー:やまやまや


MEDIA SHOP | galleryで開催されている岸本倫子、塩谷啓吾、山本友輔による展覧会「Overlap」[*1]を観た。
展覧会会場にはそのような情報の提示はなかったけれど、グループ展というよりも各自がそれぞれの意味合いで「Overlap」をテーマとしつつも、個展形式で作品/展示を展開させているように思えた。それは各々の展示に副題のようなもの(岸本→「写字から成るカタチ」、塩谷→「Expand《Overlap》」山本→「はじき」)があることもそのような連想させられたきっかけである。
岸本倫子は文字、厳密に言えば文字を学ぶ際にその意味をすり抜けてカタチに意識が向かう感覚をモチーフにしている。例えば、《変性》は書き取りドリルのような文字の形を覚えるために薄く透けた灰色の赤という文字の上に重ねて書かれた青という文字[*2]がライティングボックスによって照らされて、その様が見て取れる。対象となる言葉(「青」の上から書かれた「赤」の「青」もしくは「赤」)にフォーカスしたときに思い浮かべるイメージとの差異(対象とは異なる意味を持つ文字/「赤」もしくは「青」とのギャップ)に、思わずニヤリとさせられた。
塩谷啓吾の作品群は「Overlap」展への自己言及的なアプローチをとっていることが気になった。これらの作品は一見すると展覧会の企画者/キュレーター側の職能とされることのように見える。しかし、「インスタレーションは展示/配置することを作品とするメディウム/媒体であることから考えれば、それは展覧会そのものも含有するのではないだろうか」という意見表明であると解釈すると、しっくりとくる。
山本友輔の展示は己の経験/記憶と作品を「重ね合わせている」ことが会場で配布されている《Handout》(塩谷作品の一部)から窺い知ることができる。その中でも移動に結びつく個人的記憶から着想を得たオブジェクトが作品の材料として現れている。山本は意図していないかもしれないが、作者の視座に寄り添ってともに移動している状況を共有しているかのような印象(電車の中で/IPhoneをいじりながら/車窓から見える道を行き交うバイク、あるいはバイクの運転中に横目に入る電車/そして、おそらく作者と顔見知りではなく、たまたま同じ車両に居合わせた自分、あるいはすれ違った電車内に居ただけの邂逅とも呼べない状況)というような妄想(?)が想起させられた。
筆者の妄想はさておき、山本が提示している、はじき(早さと時間と距離)という副題は「Overlap」展そのものの構造を指し示しているように思える。その3つの要素の何を求めるかによって、関係性が変わるように出展者それぞれの問題意識が独立したものとして存在するからこそ、オーパーラップすることが可能となるのではないだろうか、と思いながら会場を後にした。

*1
Overlap(http://ejje.weblio.jp/content/overlap)はいくつかの意味を含んでいるため、詳細はリンク先などを参照しつつ、本レヴューを読み進めて頂ければ、と思う。

*2
筆者がうろ覚えであるため、「赤」と「青」が逆である可能性がある。

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