• 2020年02月05日

開催情報

【作家】川井雄仁・梅津庸一
【期間】2020年2月15日(土)- 3月7日(土)
【開館時間】10:00 – 18:00
【休館日等】日・月曜日
【料金】無料

会場

会場名:現代美術 艸居
webサイト:http://gallery-sokyo.jp
アクセス: 京都市東山区古門前通大和大路東入ル元町 381-2
電話番号:Tel: 075-746-4456

概要

この度、現代美術 ⾋居では、⼆⼈展 川井雄仁・梅津庸⼀「LOOP な気分で SHOW ME【⼟塊】」を開催致します。本展では川井の新作 10 点、そして梅津にとって初の試みとなった「陶芸」作品と、それにちなんだドローイングを展⽰いたします。 今展は川井が梅津に声をかけることで実現しました。2018 年にアートバーゼル⾹港で梅津の作品を⾒た川井は梅津作品の少年っぽさ、ジョルジュ・スーラとは違うノイズのような点の集積による絵画作品の不可解さに惹かれたと⾔います。
⼆⼈はともに 1980 年代に⽣まれ、川井は茨城、梅津は⼭形という地⽅都市で育ちました。昨年初めて出会った⼆⼈の共通の関⼼ごとが、美術ではなく 90 年代の J-POP であるということは地⽅都市における⽂化受容の均質さを物語っています。また⼆⼈はバブル崩壊後に「社会⼈」の年齢を迎えたいわゆる「ロスジェネ世代」にあたります。世代だけでは区別しきれませんが、80 年代〜90 年代のインフラや⽣活環境からの影響を⼤きく受けた世代であると⾔えます。「現代美術」は今、どのように定義し得るのか、そして「陶芸」という伝統ある分野と交差するとき、どのような展開が期待できるのでしょうか。「陶芸」もまた「洋画」、「⽇本画」、「彫刻」のようにメディウムと制度に規定された⼀つのジャンルなのか否か。⼆⼈はそれぞれ伝統的な「陶芸」の世界から⼀定の距離をとりながら⼟や釉薬と即物的に向き合っています。実⽤的な「器」のアレンジに終始することもなければ、⼋⽊⼀夫やイサム・ノグチの影がちらつくこともありません。⼆⼈の「陶芸」作品の共通点は極めて具体的なエピソードを抽象化している点です。
抽象といってもかたちを幾何学に還元するのではなく、物質の持つ厄介さや⽋点を積極的に抱え込みながら従来の「陶芸」の規範から⼤きく外れた作品を⽣成しています。しかしそれは直ちに先⾏世代に対する「新しさ」を担保するわけではありません。現代美術っぽい雰囲気だけを漂わせるプロダクトに陥ることなく、過去の事例のありえたかもしれない別の可能性を浮かび上がらせるような作品を⼆⼈はそれぞれに⽬指しました。
川井は、ロンドン芸術⼤学チェルシーカレッジオブアートにて現代美術を学び、⼀度は美術から離れたものの、地元である茨城県の笠間で「⼟」という素材と出会うことで、制作活動を再開させました。川井の作品は「器」という形式を中⼼に据えて展開しています。しかしながら極めて複雑な造形とテクスチャーを有しているがゆえに、⽣活に根ざした「⽤の美」からはかなり逸脱しています。川井の「器」は⽤途性があるわけではありませんが「彫刻作品」というわけでもありません。川井の陶芸は現代の私たちが⽣活のなかで「使う」ための陶芸ではなく、作品を⾒た鑑賞者の⽬や知覚をなかば強制的に「使わせる」という性質を持っています。
梅津はこれまで⼀貫して絵画や美術が⽣起する地点に強い関⼼を抱きながら活動してきました。絵画制作だけでなく、映像作品や、私塾の運営や展覧会の企画、テキストの執筆など様々な⽅法でアプローチしてきました。今回、「陶芸」という新しいメディウムと出会うことで、梅津はこれまで⾒せることのなかった⼀⾯を表出させました。本来、絵画は永続性を志向するメディアですが物質として耐久性があるものではありません。しかし「陶器」は物理的衝撃を与えなければ時代を超えて半永久に存在していきます。そんな絵画とは違った時間を内包した陶芸というメディウムで梅津は「花粉濾し器」、「戦艦加賀」、「パームツリー」、「陽が差し込む部屋」などを制作しました。今後これらは梅津の体系の中でどのように位置付けられ、使われていくのでしょうか。
茨城の⼯房で 90 年代の J-POP を延々とループ再⽣させながら昼も夜も関係なくとり組んだ⼆⼈が⽣成した陶芸作品を是⾮この機会にご⾼覧いただけますと幸いです。