開催情報
【作家】人見将
【期間】2014年4月18日(金) – 2014年5月7日(水)
【料金】無料
http://blow-works.com/gallery/press/140418_0507.html
会場
会場名:gallery nearwebサイト:http://blow-works.com/near
アクセス:〒606-8227 京都市左京区田中里ノ前町34-2 珠光ビル百万遍 B1F cafe dining near 店内
電話番号:075-708-8822
開館時間:12:00〜22:00(最終日17:00まで)
休館日等:2014年4月23日(木)、5月1日(木)は休廊
概要
人見の作家としてのキャリアは2000年に開催した個展から始まり、今年で14年を数えます。その間、東京を拠点に国内外を問わず様々なギャラリーやカフェ、クラブといった場所で個展、グループ展に出展し、精力的に活動してまいりました。一人の無名の写真家との出会いから写真家を目指し、作家活動をスタートさせた人見は、意欲的に作品の発表を続けてまいりましたが、思い描いた未来とのギャップから30歳で一度制作活動を断念し、暗室機材を除くカメラ等の一切の機材を手放します。当初からカメラを用いての写真作品を数多く生み出しておりましたが、再び制作を始める際に、「今あるもので、身の丈にあった作品を作りたい」という当時の心境と環境から、現在の制作技法「フォトグラム」へと表現を移行させます。フォトグラムとは、写真表現における暗室技法のことで、カメラを用いずに印画紙の上に直接物体を置き、感光させて制作します。物体の輪郭ははっきりと写り、伸縮はなく等身大、全く同じものの複製はできないのが特徴となります。我々が普段からよく見る一般的に認知されている写真作品は、カメラで被写体を撮影しフィルムやデータを現像することで作品に仕上げますが、同じ写真でありながらそれらとは大きく異なる技法と言えます。フォトグラムで有名な作家にシュルレアリスムを代表する作家、マン・レイや、ノイエ・フォト(ドイツ新興写真)のモホリ・ナジなどが挙げられ、1920年代からフォトグラム作品が注目され始めました。日本のフォトグラム作家としては、瑛九が「フォトデッサン」と名づけて数多くの作品を制作したほか、杉浦邦恵による人物フォトグラム作品や、西村陽一郎の「蛍の光」を感光させた作品などが挙げられます。人見はこれらの作家の作品に影響を受けながら、不遇の時代に心救われることとなった「折り鶴」を表現の素材として使用し、作品に昇華することで幻想的且つミニマルな印象を与える唯一無二な画面を表出しております。フォトグラム作品として最初に生み出された作品「River」(2008〜2010年)は、大全紙(508×610mm)60枚を繋げることで1つの「川」となる作品で、1枚1枚に無数の折り鶴が集まり「川」を形成しております。繊細な印象を与えつつも、60点からなる「川」の一部分達は、両岸を浸食し川幅を広げているものやカーブしているもの、砂岸を形成しているものなど水の流れによって絶えず変化する川の表情を切り取っているかのようでもあり、四季によって景色を変える山間下る河川を想起させます。「脱ぎ捨てた衣服」シリーズ(2014年)では、今まさにその場で衣服は脱ぎ捨てられ、触れるとまだ肌の温もりを感じるような生々しさを醸し、無造作に置かれた下着のシルエットからはユーモラスささえも感じます。同時に、脱ぎ捨てられた衣服達は我々現代人が生きていく中で無意識に形成された概念やエゴ、飾らざるを得なかった自尊心の残骸=「自身の抜け殻」のようにも思え、自らの意志でそれら全てを脱ぎ捨て一旦人生をリセットし、一糸纏わない姿が残されることで自身の本質と対峙する事を促しているようであります。
本展は、「a common language」と題され、2008年以降に制作されたフォトグラムの旧作に加え、新作を交えた作品群で構成されます。「a common language」を直訳すると「共通言語」となり、タイトルから人見が自身の表現を通して様々な人種、また、人類に限らず万物との会話を試みるかのような気概を感じさせます。絵画とは異なり、写真表現においての歴史は浅く、様々な論議が巻き起こる表現法でありながら、こんなにも直接的に視覚と記憶に訴えかけ、また、一般的に親しまれている表現は他に類を見ません。人見が表現に用いるフォトグラムが写真表現としての純然たる本質を投げかけると共に、写真を含む美術作品の多くは、鑑賞者に大きな感動と衝撃を与えてくれます。それらはまさに、国籍や言葉の壁を凌駕するほどの、「共通の言語」として機能しはじめるのであります。
ARTIST STATEMENT
ある無名の写真家と出会った。私は当時カメラ屋でアルバイトをしていた、そこに彼が入社してきた。
彼は私よりひとまわり年上の、もの静かで物腰の柔らかい男だった。
しばらくして彼の個展-fragile-に招待された。一面はキャビネサイズのモノクロ写真。もう一面は詩。
それらが薄いガラス板に閉じられて空間中に吊るしてあった。くるくるまわるそれらは、私と直角になった時に、消えた。
そして、私は写真を始めた。
10年後。
私はカメラを捨てた。30歳でものにならなかったら作家活動を辞めようと思っていた。カメラを全部売った。暗室機材は売れなかった。
作家活動で作った借金返済のため普通に働いた。今までに比べてとてもヒマだった。鶴を折った。ずっと折った。
そして、折り鶴を使ったフォトグラムを始めた。
プロフィール
人見 将| HITOMI Masaru1978年埼玉県生まれ、東京工業専門学校電気工学科卒。埼玉県在住。
フォトグラム技法を使った作品を制作している写真家。2004年レジデンスプログラムにてメキシコに滞在。
20代後半を京都で過ごす。2006年東川町フォトフェスタストリート部門グランプリ受賞。
2011年RICOHポートフォリオオーディション優秀賞受賞。
【 主な個展 】
2005 森-Forest-, Mone, Tokyo / Kosugiyu, Tokyo
生まれたての光-Born Light-, Mone, Tokyo
2006 形-Form-, Mone, Tokyo
感情の感覚-Sense of emotion-, Atha, Kyoto
極楽の花-Flower of paradise-, Casumi, Kawasaki
2012 窓から見た風景-Landscape from the window-, Gallery Cafe 3, Tokyo
即興?写真-impromptu photograph?- Kaoriza, Tokyo/Gallery Cafe 3, Tokyo
2013 審美-Shinbi- ART GALLERY M84,Tokyo
写真と言葉-Photograph and Word- cafe gallery momomo, Tokyo
OX THE LIVING ROOM, Saitama
2014 a common language, Gallery Cafe 3, Tokyo
【 主なグループ展 】
2005 Tokyo Shutter Chance #001, Mone, Tokyo
Higashikawa International Photo Festival, Hokkaido
2006 Tokyo Shutter Chance #002 SYNCRONICITY, Mone, Tokyo
How are you, Photography? Gallery Kobayashi, Kyoto
Higashikawa International Photo Festival, Hokkaido
2007 Tokyo Shutter Chance #003 FAMILY, Mone, Tokyo
Higashikawa International Photo Festival, Hokkaido
2008 Tokyo Shutter Chance #004 Calling, Mone, Tokyo
2009 Tokyo Shutter Chance #005 See Saw, Mone, Tokyo
2010 Tokyo Shutter Chance #006 Letter, Mone, Tokyo
2011 Tokyo Shutter Chance, Mone, Tokyo
2012 念力・浸透・輪郭-Willpower, Percolation, and Outlines- Richo photo gallery RING CUBE,Tokyo
2013 花景-Views of the flower- 26nich-no-tsuki,Tokyo
佐藤志保、畠山雄豪、人見将による写真展「念力、滲透、輪郭」-Willpower, Percolation, and
Outlines-
Higashikawa Bunka Gallery, Hokkaido
JITTER#01 CCAA, CCAA, Tokyo
【 パブリックコレクション 】
北海道東川町