• 2014年02月21日

開催情報

【作家】
冨士和則
【期間】2014年2月28日(金) – 2014年3月12日(水)
【料金】無料
http://blow-works.com/gallery/press/140228_0312.html

会場

会場名:gallery near
webサイト:http://blow-works.com/near
アクセス:〒606-8227 京都市左京区田中里ノ前町34-2 珠光ビル百万遍 B1F cafe dining near 店内
電話番号:075-708-8822
開館時間:12:00〜22:00(最終日17:00まで)
休館日等:木曜日休み

概要

2014年2月28日(金)から3月12日(水)までの12日間、gallery nearにて、冨士和則 展「解きほぐす界」を開催いたします。
冨士は、大阪芸術大学油画コース在籍時から、関西・関東問わず美術館や百貨店などの様々な公募展に出展し、積極的に活動してまいりました。2003年より開催されている関西を中心に活動する若手作家の公募展「アートストリーム2012」では奨励賞を受賞するなど、業界関係者からも注目を集め、徐々に作家としての期待値を上昇させております。
冨士が描く画面には、主に「水面」が描かれており、橋梁を支える柱の傍で船頭のように船上に佇む人影、心許ない踏み場で海に身を投げようとしているシルエットなど、その画面に表れる世界観は写実的に描かれつつも、どこか現実味に欠け、夢の中や空想上の世界のように感じられます。ひんやりとした空気感、凛と静まりかえった静寂に満ちた世界で水面はただ揺らめき、その動きに呼応するかのように、たゆたい続ける人影に似た物体が描かれており、肉体が存在する現実世界と魂だけが往来する無意識の世界を表出しているようにも見えます。仏教的な解釈により登場する「三途の川」に称される対岸と死後の世界の関係は、日本においては一般的に認知されており、冨士が描く「水面」と「岸」が描かれた画面から、死生観を感じるのも頷ける要因だと言えます。
冨士は近年のステイトメントにおいて、【「対岸の火事」外の世界、日常における範囲の外に関して私たちは無関心だ。成り行きを眺めるだけで当事者にはなり得ない、どこか俯瞰する視点で私たちは物事を見ている。】と記し、人は当事者になり得ない距離感の物事については傍観者となり、深く立ち入ろうとしないことに関心を抱き、傍観者と当事者との境界、自らの心象も含めた人間心理を画面に表出してまいりました。鮮明な青色が印象的な、夜明けの景色にも見える作品「対岸を臨む」(2011)では、船上に立つ人影が水平線の先にある対岸を臨んでいる「傍観者」のようでありつつも、実は、その傍観者自身がその対岸へ辿り着こうとする「当事者」であり、俯瞰で鑑賞する我々が傍観者とも捉えることができ、見れば見るほど不思議な感覚に襲われます。冨士にとっての「対岸」とは他者であり、「外の世界」、「自身の心の展望」と述べる中、他者だけでなく、自分自身も無意識のうちに傍観者となり得る現代社会において、水面を前に亡霊のように佇む人影は、対岸から見た当事者の姿か、あるいは傍観者=鑑賞者自身(または作家自身)の姿か、その判断は画面を観る者に委ねられているかのようです。
本展は作家にとって初の個展となり、大小様々な新作を中心に構成されます。展覧会タイトル「解きほぐす界」をはじめ、新作のタイトルには「界」という言葉が多用されており、「対岸の火事」の思想を経て、新たに展開される表現の主題であることが窺えます。「界」とは、【区切り。境。仕切り。】【限られた社会や範囲】といった意味を持ち、冨士にとっての他者や自身の展望との距離を隔てる「界(区切り)」は、外部からの様々な刺激や要因により変化し、自身の意志により如何様にも結び付けることができるものとして捉えております。前述した日本人が持つ宗教的観念、死生観、冨士が述べる「対岸の火事」の思想を経て表現される事で、本展ステイトメントにある「情報の取捨選択をせず、無意識に、行動・思考を外部に誘導され、いつの間にか形骸化」=「死」を意味するといったようにも解釈でき、表現された画面に合点がいく感覚を覚えます。「対岸の火事」のように、傍観者であるうちは、主体性を保持することは困難であり、自らの意志をもって当事者となることで、界(区切り)は解きほぐされ、心許ない足場は、より強固な土台となるのではないでしょうか。冨士は自戒を込めつつ、自らの意志で取捨選択し思考することの重大さ、現代社会の日本が抱える主体性の希薄さに警鐘を鳴らし、画面を通して訴えかけてくるようであります。
本展をぜひ、ご高覧くださいますよう、何卒よろしくお願いいたします。
アーティストステートメント
氾濫した情報の中で、もつれた様に舵がきかず、
右往左往しながら何かを得たくて手掴み。
ただ何となく記憶に留める。
ただ無目的に情報を享受する。以下、反復。
情報の取捨選択をせず、無意識に行動・思考を外部に誘導され、いつの間にか形骸化。
流されて本質を見失う。
おぼつかない自己形成の中で得た確信は、蜃気楼のように近づいては消えゆく。
もつれた心境の中、ふと諦観したかのように自己を見つめると滑稽に移り、
内と外、この隔たりを解すようにして向かうほかないと気づく。

プロフィール

冨士 和則| FUJI Kazunori
1987 大阪府生まれ
2012 大阪芸術大学 芸術学部 美術学科 油画コース 卒業
【 主なグループ展 】
2013 TAKE OUT ART! -アートを”お持ち帰り”する小作品展-(京都 / gallery near)
    アートストリーム 2013(大阪 / 大丸心斎橋店北館14階イベントホール)
    天祭一〇八(東京 / 増上寺「光摂殿」大広間)
    ワンダーシード 2013(東京 / トーキョーワンダーサイト本郷)
2012 奈良・町家の芸術祭 HANARART 2012(奈良・郡山 / 堺町の家)
    巡回展 東京⇔京都(東京 / アートコンプレックスセンター)(京都 / 同時代ギャラリー)
    アートストリーム 2012(大阪 / 大丸心斎橋店北館14階イベントホール)
2011 第6回タグボートアワード(東京 / 世田谷ものづくり学校)
    第29回上野の森美術館大賞展(東京 / 上野の森美術館) (京都 / 京都府京都文化博物館)
2010 第78回独立展(東京 / 国立新美術館) (兵庫 / 原田の森ギャラリー)
    第7回大阪芸術大学学生オークション(大阪 / ほたるまちキャンパス)
    第5回世界堂絵画大賞展(東京 / 世界堂新宿本店6階特設会場)
2009 第47回関西独立美術展(大阪 / 大阪市立美術館)
    大阪芸術大学美術学科4人展(大阪 / 小大丸画廊)
    大阪芸術大学美術学科小品展(大阪 / 学内ガーデンギャラリー)
【受賞歴】
2012 アートストリーム 2012 奨励賞