• 2021年02月15日

開催情報

【期間】2020年12月24日(木)~2021年3月7日(日)
【開館時間】午前9時30分~午後5時
※1月16日(土)より当面の間、夜間開館は中止します
※いずれも入館は閉館の30分前まで
※新型コロナウィルス感染拡大防止のため、開館時間は変更となる場合があります。来館前に最新情報をご確認ください。
【休館日等】
月曜日
【料金】
一般 :430円(220円)
大学生:130円(70円)
高校生、18歳未満、65歳以上:無料
※( )内は20名以上の団体
※国立美術館キャンパスメンバーズは、学生証または職員証の提示により、無料でご観覧いただけます。
※本券ではコレクション・ギャラリーのみご観覧いただけます。企画展はご観覧いただけませんので、ご注意ください。
コレクション展無料観覧日
2020年12月26日
※都合により変更する場合があります。
コレクション展夜間割引
夜間開館日の午後5時以降、コレクション展観覧料の夜間割引を実施します。
一般 :430円 → 220円
大学生:130円 → 70円
※午後5時以降に観覧券をご購入、入場されるお客様に割引を実施します。
※観覧券のご購入、入場は閉館の30分前まで。
https://www.momak.go.jp/Japanese/collectionGalleryArchive/2020/collectionGallery2020No04.html

会場

会場名:京都国立近代美術館
webサイト:https://www.momak.go.jp/
アクセス:〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町26-1
電話番号:075-761-4111

概要

 当館所蔵・寄託の西洋近代美術の優品を紹介するコーナーです。今回は、当館に寄託されているモーリス・ユトリロ(Maurice Utrillo, 1883 ‒ 1955)の三作品を紹介します。
 ユトリロは、1883年に、ルノワールやロートレックらの絵のモデルを務め、自身も画家となったシュザンヌ・ヴァラドンの私生児として、パリに生まれました。ユトリロという姓は、彼を認知したバルセロナの貴族出身で文芸ジャーナリストのミゲル・ウトリーリョ(・イ・モルリウス)に由来します。母のシュザンヌは、こののち二度結婚しますが、ユトリロは終生この名字を名乗りました。自らの生活と絵画制作に没頭する母はユトリロから離れ、彼は母方の祖母と二人きりで幼年期をパリ郊外で過ごします。しかし孤独感からパリの中学校に入学したのを契機に酒を飲み始め、早くもアルコール中毒に陥ります。その治療法の一環として絵筆をとり、独学で絵を描くようになったのが1904年、ユトリロ20歳のときでした。それ以降、飲酒による度重なる不祥事や精神病院への入退院を繰り返しつつ、ユトリロは自ら暮らした主にモンマルトルの風景を描き続けました。
 《田舎の教会》(1911年)と《モンマルトルのミミ・パンソンの家》(1915年)は、ユトリロの最も著名な「白の時代」(1910~16年頃)の作品です。いずれもざらりとした壁のマチエールが特徴的ですが、この漆喰壁の描写を実現するために、彼は石灰や卵の殻、砂といった白い物質を絵具に混入しました。また、前者の作品では教会へ繋がる道が左にカーブし、後者の作品においても丘の斜面を下るはずの道はふっつりと途中で途絶え、いずれにしても先を見通すことができません。画面中央を占める、朴訥な尖塔と複数の屋根を持つ教会、そして屹立する複数の煙突を持つ赤い壁の家は、将来を見通せないユトリロ自身の姿に重なります。モンマルトルの丘に立つサクレ・クール寺院へと繋がる《サン・リュスティック通り》を描いた1921年、ユトリロは公然猥褻罪で逮捕され、刑務所に拘留されたのち、責任能力なしとの鑑定により精神病院に収容されます。この事実を踏まえれば、写実的なこの作品が、実際の風景を前に描かれたと考えるのは難しく、事実、ユトリロがラパン・アジルに代表されるモンマルトルの同じ風景を何度も繰り返し描く際に参照したのは、市販の絵はがきでした。通称「色彩の時代」の本作品では、以前の物質的マチエールは影を潜め、黒い描線の強さが目を引きます。しかしここでも、画面奥へと延びる通りはその先で湾曲し、サクレ・クール寺院に至る道筋が明らかになることはありません。
 モンマルトルの風景は、ユトリロにとって単に描く対象ではなく、描くことによって自らが生きる場所そのもの、つまり彼自身だったと言えます。そのことをジャン・コクトーは、風車のあるムーラン・ド・ラ・ギャレットを想起しながら、ユトリロの死去に際して寄せた追悼文で次のように述べています、「粉ひき屋のいない風車、それは死んだ翼である。」