開催情報
【期間】2020年9月12日(土)–2020年10月25日(日)【開館時間】11:00〜19:00
【休館】月曜休館(祝日・振替休日の場合は開館、翌火曜日に休館)
【料金】無料
https://gallery.kcua.ac.jp/archives/2020/310/
会場
会場名:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAwebサイト:https://gallery.kcua.ac.jp/
アクセス:〒604-0052 京都市中京区押油小路町238-1
電話番号:075-253-1509
開館時間:11:00〜19:00
休館日等:月曜日
概要
新型コロナウイルスの感染拡大によって、人々の移動や対面でのコミュニケーションが大きく制限されるようになって数ヶ月が経ちました。世界中の人々が、当たり前だった「これまで」を振り返りながら、来るべき「これから」について、立ち止まって考える日々を過ごしています。この依然とした非常事態の中で行われる本企画では、あらためて異文化との接触やコミュニケーション、またそれらがもたらすものについて、京都市立芸術大学芸術資料館収蔵品、また本学大学院美術研究科博士(後期)課程修了生の横内賢太郎の現在進行形の実践と思考の中に見出すことを試みます。本学芸術資料館には、明治期から現在まで歴代の卒業・修了作品が収蔵されています。これらの作品を順に辿ると、時代を追うごとに表現の傾向が移り変わっていくのに気づかされます。最初期の特筆すべき変化としては、1903年の京都市紀念動物園(現在の京都市動物園)開園以後、動物が積極的に描かれるようになったことや、欧州視察で知見を得た竹内栖鳳(1864–1942)をはじめとする当時の教員から学んだ西洋画表現からの影響などが挙げられます。本企画では、これらの「出会い」が作家たちにもたらしたものとその受容のあり方を、入江波光(1887–1948)、渡辺与平(1889–1912)、村上華岳(1888–1939)の3名の画家の卒業作品から考察します。
そして、2階の展示室では、横内賢太郎による「誰もに何かが(Something for Everyone)」が展開されます。横内は「文化的接ぎ木」をキーワードに、さまざまな文化的・歴史的背景を持つイメージをメディウムによって画面上に転写し、ステイニングの技法(下地処理を行わない画布に絵具を染み込ませる)を用いてそれらの図像を画面上で再接続する絵画作品を制作してきました。その姿には、本企画で取り上げる明治期の作家たちが、模写による学習からはじめて、自らの表現を模索していった様が重なるようでもあります。
2007年に本学大学院美術研究科博士課程を修了して以後、数年間日本で作家活動を続けたのち、横内は2014年にインドネシアに移住します。また、調査や活動を続ける傍ら、自宅をアートスペース「Artist Support Project」とし、自身の絵画による実践とは別の形で文化と交流について考えていくプロジェクトを運営します。そして、そうしたなかで浮かび上がってきた新たな課題に挑戦すべく、2020年春にオランダに拠点を移すことになります。本企画では、各地で制作した作品に加え、「Artist Support Project」での活動のアーカイブも展示し、横内がアーティストとして、異文化に属する文物のイメージの接続、人々の交流についてどのように思考を巡らせているのかを包括的に提示します。
移動や対面でのコミュニケーションが叶わず、オンラインにそのほとんどを代えざるを得ない日々は、まだしばらく続くことでしょう。自分の前にあるディスプレイの画面とヘッドフォンを通して出会う人々、出会う世界は近いようで遠く、それらに心奪われるというよりは、いつしか内省している自分に気づくことの方が多いのではないでしょうか。いまは、外からの刺激を糧にして動くのではなく、立ち止まっているからこそ見えてくるものに目を向け、聞こえてくるものに耳をすまし、未来に備えて自分の中に「考えをたくわえるとき」なのかもしれません。このような時代において本企画が「これから」のためのたくわえとなる「出会い」をもたらすものの一つとなることを願います。