• 2015年07月14日

開催情報

【作家】
 中尾美園
【期間】2015年7月14日(土) ─ 7月26日(日)  
【料金】無料 

会場

会場名:Gallery PARC
webサイト:http://www.galleryparc.com/
アクセス:〒604-8082 京都市中京区三条通御幸町弁慶石町48三条ありもとビル
[ル・グランマーブル カフェ クラッセ]2階
電話番号:075-231-0706
開館時間:11:00~19:00(金曜日のみ20:00まで、最終日は18:00まで)

概要

 Gallery PARC[グランマーブル ギャラリー・パルク]では、2015年6月30から8月9日にかけて「Gallery PARC Art Competition 2015」として3つの展覧会を連続開催いたします。
 本展は様々なクリエイション活動へのサポートの一環として、広く展覧会企画を公募し、審査により採択された3名(組)のプランを実施するコンペティション「Gallery PARC Art Competition 2015」に応募された34のプランから、平田剛志(京都国立近代美術館研究補佐員)、山本麻友美(京都芸術センタープログラムディレクター)の2名の審査員を交えた厳正な審査を経て採択された田中秀介、中尾美園、明楽和記の3名による展覧会を実施するものです。ギャラリー・パルクではこのコンペティションに2014年から取り組み、本展は昨年に続き2回目の開催となります。
 2015年6月30から7月12日にかけて、その#02として、「中尾美園:図譜」を開催いたします。
 「中尾美園:図譜」は、2006年に京都市立芸術大学大学院美術研究科保存修復専攻修了した中尾美園(なかお・みえん/大阪生まれ)による個展として開催されます。
 おもに日本画材を用いた絵画による作品制作・発表や2008年の「京展」や2013年の「シェル美術賞」への入選、2015年の「飛鳥アートヴィレッジ」への参加、仏画や水墨画等の制作、様々な分野の講師を招いてのイベント開催、教室の主宰など幅広い活動を続ける中尾は、2011年ごろより、日常の中に自身が拾い・見つけた「物」を丹念に描き、記録するといったアプローチによる絵を試みています。それは時に散歩の度に拾って帰った落ち葉であり、水路に流れてくる漂流物であり、中尾は『上流で水路に物が落ち、私がすくい上げるまでの物語を想像しながら、漂流物に向き合った足跡が画面に展開する。物に内包される世界と、物を内包している世界を行き来しながら、手で描き残す日記のような絵画である』と言います。
 丹念に写生されたひとつ一つは、私たちにとって何気ない物の目の前の姿として見ることができます。しかし、そこには確かに「それまで」が含まれ、また私たちはその時間に思いを馳せることもできるのではないでしょうか。
中尾美園プランについて (プラン採択審査時の寸評)
木の葉や落ち葉を膨大に描いた植物図鑑を思わせる絵巻やタペストリー風の絵画は、過ぎた時間や土地の記憶・記録をいまに伝え残す絵画の特性が表れていました。それは、保存修復コースで学んだ丁寧で確かな技術、模写や写生で培った観察力に支えられた作品といえます。しかし、精緻な絵画の発表プランとして、インスタレーションが相応しいのか、「現代美術」の流行や形式ありきではなく、作品の本質に即して再考する余地はありそうです。京都、福島、奈良とさまざまな土地を経てきた作家にとって、今展をこれまでの集大成とさらなる飛躍の機会とされることを願います。
平田剛志(京都国立近代美術館研究補佐員)
展覧会について
 電子書籍やデジタルミュージアムなど、ARやデジタル技術での再現性の進化は、身体や物質からかい離した空間で生きてゆく違和感を徐々に馴染んだものにしている。将来、和紙や絵具や筆を使用して絵を描くことは希少で、材料が手に入らないかもしれない。
 絵を描くことは私の日常的な行為である。写生は絵を描くための学びであり、写生した図絵は本絵を描くための手控えにもなるし、紙に描き残すことは記録でもある。
 今回の展示作品の一つに、水路に流れてくる漂流物をすくい上げ、日記のように描き留めた絵画がある。上流のある時点で水路に物が落ち、私がすくい上げるまでの物語を想像しながら、漂流物に向き合った足跡が画面に展開する。物に内包される世界と、物を内包している世界を行き来しながら、手で描き残す日記のような絵画である。
 先日、考古資料の保存に関わる方から、発掘された土器片の洗浄作業中に粘土を成形する際に付いた古代人の指跡が、自分の指跡とぴったり重なった瞬間に、今と変わらぬ人の営みを感じるという話を伺った。私は選んだモチーフから何かを感じ描ている。未来の人は私の筆跡を見て何を感じるだろうか。
ステートメント
世界は茫漠としている。
戦争、病気、災害、倫理のない漠とした世界の中で、何をして生きようか。
しかし世界は、小さな石や、葉っぱにつまっている。移ろい変化しながら、作用しあい、全てが響き合いながら等しく存在する。
心に映るひとつひとつに目を向けながら、内包する大きな世界を想像して遊ぶ。未来を祈りながら、私は絵を描きつづける。
中尾 美園