HAPSスタジオ使用アーティストである八幡亜樹の個展が開催されます。
概要
八幡亜樹:ベシュバルマクと呼ばないで //2022日時:2023年2月14日(火)〜2023年5月28日(日)10:00〜18:00
会場:京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル(〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町124)
入場料:無料
休館日: 月曜日 ※祝日の場合は開館
主催:京都市
協力:一般社団法人HAPS
制作協力:TOBE
https://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20230214-20230528
展覧会概要
八幡亜樹(1985- )は、長らく「辺境」に着目し、独自の取材調査をもとにした映像インスタレーションを制作している現代美術家です。本展、「ベシュバルマクと呼ばないで //2022」では、この辺境の一端を担うものとして、近年、作家が強く関心を寄せる「手食」をテーマとした新作を発表します。手食を「人類のパフォーマンス」と表現する八幡は、文明の発達とともに失われていく手食の面影や痕跡、現在の在り方を調査し、アーカイブしていくとともに、行為としての手食に身体性や感覚の解放と拡大、人と人との結びつきや自他の共通性を見出していきます。そして、芸術を通して手食を考え、映し出し、未来への兆しや人間の可能性を含んだ「今」を探ってきました。
本展では、カザフスタンとキルギスの伝統的な肉料理であるベシュバルマクに焦点を当てています。作家は、「5本の指」を意味するこの料理名に手食との深いつながりを感じとり、2022年の秋から冬にかけて中央アジアで実地調査を行いました。しかし、取材を進めるなかで、この料理名をめぐるカザフスタン人の複雑な思いとアイデンティティの問題、その背景にあるロシアとの関係にも触れていくことになります。ベシュバルマクとは、そもそも植民者であったロシア人によって後から名付けられた料理名であると考えられていたのです。また、この料理名について、手食する遊牧民としてのカザフスタン人を見下すような意味合いも込められていたのではないかと解釈する民族誌学者にも出会いました。
本作の調査を進めるなかで、八幡は手食の原型を遊牧民の面影に求めました。彼女の見つめた遊牧民(ノマド)たちの姿は、しかし、その後現地の人から「現代のノマド」だと指摘された調査旅行者としての八幡自身と、八幡の旅と並走していた、戦争によって中央アジアへと流離するロシア人男性らの姿と重なり合っていきます。
「ベシュバルマクと呼ばないで //2022」は、そのような複数の視点が、過去から現在、未来を結ぶ時間的(歴史的)な軸と、ロシアと中央アジアを結ぶ空間的(地理的)な軸が交わり合いながら、その視点の数の現実を映し出していきます。そして、その複雑な絡まりのなかに、人間世界の確かなリアリティを浮かび上がらせていきます。
本展は、主に、現地での映像と、ベシュバルマクの記憶をめぐるカザフスタン人女性の詩、戦争で故国を離れたロシア人男性の詩、そして、カザフスタン人アーティストによる作品全体を繋ぐラップ音楽、ファッション広告のようにも見えるバナーで構成されたインスタレーションです。時に音楽やファッションと接続して「手食」の現代社会への通路を拓きながら、芸術というフィルターを通した手食だからこそ捉えることのできる、人間の生や人類のあゆみに考えを巡らせていきます。
(展覧会ウェブサイトより)
関連プログラム
八幡亜樹 アーティストトーク日時:2023年3月5日(日)14:00-15:30(13:30受付開始)
会場:京都市京セラ美術館 講演室(本館地下1階)
料金:無料
定員:30名(予約不要・先着順)
ザ・トライアングル「八幡亜樹:ベシュバルマクと呼ばないで//2022」の出品作家である八幡亜樹のアーティストトークをおこないます。
本展の出品作のほか、これまでの活動や、現地取材の経験、今後の活動について話を伺います。
アーティストプロフィール
八幡亜樹(やはた あき)1985年、東京生まれ、北海道育ち。2008年、東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業。2010年、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。現在、京都市在住。これまで開催した主な個展に「楽園創造 vol.07-八幡亜樹個展」(galleryαM、2014年)、「彼女が生きたかった、今日の日に。」(HENKYO.studio、2021年)。近年参加した主なグループ展に、「逡巡のための風景」(京都芸術センター、2019年)、「79億の他人ーこの星に住む、すべての『わたし』へ」(ボーダレスアートミュージアムNO-MA、滋賀、2021年)など。