京都スタジオ事例3:GURA — 宮永 亮/八雄/古賀 睦/田中 良/河野 如華/石黒 麗/岡村 優太/貴志 真生也


京都スタジオ事例3:GURA — GURAメンバー

2012年7月25日
場所:京都市伏見区
写真提供:gura
インタビュー:HAPS インタビュー協力:早川七月

今回は伏見区の住宅街の一角へ。元酒蔵を使った共同スタジオ「GURA」にお邪魔し、アーティストの宮永亮さんと八雄さん、田中良さんにお伺いしました。

1GURAについて

八雄(以下:H)/最初に話を持ち出した僕と宮永亮、田中良の 3人は、もともと京都市立芸術大学の友人同士で、3人でアトリエとして使用できる物件を探していました。

宮永(以下:M)/物件はルームマーケットのHPで探しました。他の物件も色々と見ましたが、ここの広いスペースが気に入りました。でも、3人で使用するにはスペースが広いので、貴志真生也くん、河野如華さん、楠本真理さんを誘い、6人で借りることにしました。

H/初期投資にかかった金額は、6人で割って普通に住居物件に引っ越しのときに払うのと同じくらいですね。更新料はありません。それ以外に改修の経費がかかっています。

田中(以下:T)/1人あたりの家賃は2万円弱です。ここは、もともと酒蔵でした。入居時は、ぶち抜きの空間で、基本的に何もなかったです。体育館みたいな雰囲気。酒樽があったくらいで。

H/はじめに、各アトリエと住居スペース、余った所に共有スペースのリビングをつくりました。その後、本棚をつくったり、収納やロフトを天井に組んだり、作業スペースも作りました。

M/最初の1年くらいは作品つくらず、ずっと改装をしてましたね(笑)。もともと、「無いのなら作っちゃおう」という考えがあったので、自分たちで作ることに全然抵抗はなかったです。

H/来た人はこの作り込んだ様子を見て、「すごい!」と言うけれど、たぶん最低限の電動工具さえあれば誰でもできますよ。シェアアトリエは、元工場や工房を使用している例が多いと思うのですが、コンクリートや鉄筋の建造物だとビスが打てないじゃないですか。ここの良い点は木造建築であること。内部をいじる点でそれはとても好都合でした。はじめはお風呂も無かったのですが、理解ある大家さんがユニットバスを設置してくれました。僕と宮永はアトリエ兼居住を考えていたのでとても助かりました。

T/GURAが続いているのは大家さんのおかげですよ。ある日、気がついたらトイレがウォシュレットになってたり、ありがたいことだらけです(笑)。

H/大家さんとはいい距離感が保てていると思います。GURAの隣に住んでいらっしゃるのですが、細かな干渉やチェックは無く、ご近所付き合いくらいの感覚ですね。それがありがたいです。オープンスタジオの時は大家さんのご家族を招待したり、改装した後の状態を見に来ていただき、良いリアクションをいただきました。


2イベントとメンバー

T/初期のメンバーは、偶然にもほぼ全員が、元軽音部で音楽好き、イベント好きだったんです。それがGURAの特徴を決定づけているのではないでしょうか。

H/展示、イベントやオープンスタジオなど様々なことをおこなってきました。これまでに3回『G祭』という、メンバー総動員で知り合いに声をかけて模擬店やパフォーマンスで参加してもらうイベントを行っています。まあ、テンションと作り込みが果てしなく激しい、ただの飲み会なんですけど(笑)。せっかくスタジオに広い場所があるので、制作するだけの場所にはしたくないと借りた当初から考えていました。外部の人をアトリエに呼べる機会があることで、僕らにとっても刺激になるし、来た人同士もつながっていく流れや動きにもなってほしい。もともと、自分たちが人とつながることや、違う分野へ触手をのばしていくことが好きだったから、必然と今のようになったと思います。


3シェアのメリット

M/制作の方向性が一致せず、様々なジャンルの作家が集まっているので、いろんな面でお互いの得意な分野や利点を活かし合っています。特殊な道具や機材を持ってなくても、メンバーの誰かが持っているので貸し借りしたり。

H/無いものは共同で買うこともできるので,金銭的にも助かります。

T/上手くシェアをするコツはルールを最低限にすることです。ルールが多いとむずかしい。

H/生活サイクルもみんなバラバラですしね。ゴミ当番を決めたり、トイレ掃除の順番等、あまり細かい決めごとはしない。 気がついた人がやるくらいでないと。

T/展覧会前などで誰かがベストなパフォーマンスをしなければならない時に、他の入居者がそれを支えられる方が良いと思います。それに関してGURAメンバーは、今のところなんとかやっている。お互いどこかで迷惑はかけているのだし。迷惑をかけたら反省してちょっとずつ改善していくという感じで。GURAはメンバーの柔軟な考え方で成り立っているのだと思います。


4卒業後の活動

H/僕は学部を卒業して就職し、1年半くらい仕事をしながら作家活動をしていました。社会に出て分かったことは、学校で当たり前だった情報交換や、刺激のある環境は特殊だということ。日常の細部に効率よく情報や制作に適した環境を取り入れるには、共同アトリエやシェアリングが制作のモチベーションを保つためにも有効な手段だと思います。だからといってシェアアトリエ全体をグループとして活動しているのではなく、基本的に、個人の活動がそれぞれベースにあって、あくまでも個人がおもしろいと思うことを効率よくやっていく為の場所のように思います。

M/単純に京芸の卒業生の制作場所だけではつまらないと思った。イベントの時や新メンバー募集の時は、なるべく他の大学やまったく職種の違う人と関わるようにしています。でも、変わろうしているのではなく、むしろ大学の時の感覚を継続し続けています。

H/美大を卒業してから制作場所やお金で悩んで、制作をやめる人は多いです。でも、50〜60歳になってもクオリティーの高い作品や音楽を創り出しながら、別に生業としての仕事もしている、いい意味でグレーゾーンのど真ん中を行っている人もたくさんいます。制作活動と仕事の割合が、100か0じゃない、いいバランスの取り方があるはずです。それは人によって違うし、自分で見つけていかなきゃいけない。GURAを見た後輩や年下の人たちにこういうやり方もあるということに気がついてほしいですね。


5京都のメリットとデメリット

H/京都は住み良いまちです。いろんなものが見えますしね。あと、京都のジャンルミックスなところはいいと思います。美術の中でも、アングラからアカデミックなものまで、いろんな人たちといいサイズ感で幅広く付き合えるのがいいと思う。それがとてもいいボリュームなんです。ぎゅっと小さなコミュニティで身内のみにしか広がらないのではなく、年に1~2回ほどだけ会う人が増えます。それだけネットワークが広がるのはおもしろいですよ。ただ、世間に名を売り込むことや、メディアを利用することなどはみんなどちらかというと苦手だと思う。

M/デメリットは関西に現代美術のマーケットがあまり無いことです。「作家が生活できる仕組み」という意味でのマーケット。別に、直接作品の売り買いをする場が欲しいわけではない。横同士のつながりの中でまわせるものがあったり、スムーズに情報が入ってくる仕組みに適した場所が、京都を含め、今の関西には無いように思います。

H/京都だけでは発表の場が少ないことを考えると、大阪との距離感がもう少し近くなっても面白いと思います。物理的にも感覚的にも。あと、自分たちから発信していけるようなメディアは作った方がいいと思い
ます。インターネットなのか何なのか分からないですが。

T/東京経由ではないものがほしいですね。

H/東京一極集中ではいけないと思います。でも、「京都」という打ち出し方をするのもまた違う。

M/それをやると、逆に「東京」になってしまう

H/個人、グループレベルでの士気は高いし、外へ発信するものあると思うんです。だから、HAPSが立ち上がったのはとてもいいと思う。アーティストは溢れかえるほどいるけど、コーディネーターやキュレーターと鑑賞者が少ないので、供給過多になってしまっている。 だから、個別のアーティストが草の根的に頑張っている。

T/作家がアウトプットの最後までするのが悪いことではないのですが…。

M/でも、それで失速することはあります。

T/音楽だったら音楽関係者で、美術なら美術関係者や作り手同士で作品を見せ合っていることが寂しい時もあります。

H/そこでディープなコミュニケーションはありますが、なかなか広がりませんね。

M/あと、しっかりした批評家が京都には少ない。たぶん、アカデミズム的な部分が育っていないのだと思います。素地はあるはずなんですが、アカデミズムみたいなのが存在感を持てないというのは関西の気質なのかもしれないですね。

H/個人的な見方ですけど、京都には長い伝統と歴史があって、それに対してのプライドが強すぎる。だから、若い世代の新しいものに対する上の世代の寛容さは基本的に低いように感じます。でも、現在どのようなものが作られていて、その中で何を残していくかを考えることも大切だと思うんです。最近、ようやくステレオタイプの”京都”というのは薄れてきているように感じます。そこからさらに、京都で生活や活動している人にも実際の京都はどういう街なのか捉え直してもらって、改善策を考えたり、活動していくことは決して悪いことではないと思っています。

● 宮永亮 MIYANAGA Akira
1985年北海道生まれ、京都市在住。京都市立芸術大学大学院修了。平成23年京都市芸術文化特別奨励者。実写映像を幾重にも渉るレイヤーで構成し、コラージュする手法を用い、インスタレーションおよびスクリーニングによる発表を行ってきた。主な展覧会に、「2012 MOVEON ASIA 」(オルタナティブスペース・ループ、ソウル、2012)、「成層圏」(gallery αM, 2011)、「NEWDIRECTION 1」(トーキョーワンダーサイト本郷、2009)、主な作品に《arc》(2011)、《地の灯について》(2010) などがある。

● 八雄 HACHIO
1981年生まれ。絵描き。京都西山の麓にて育つ。
自己の身体感覚を触媒とし、その場に漂う「見えざる風景」「形なきもの」の姿を現す。
活動形態はアンダーグラウンドからオーバーグラウンドまで多様なシチュエーションでの即興ペインティングや他ジャンルのアーティストとのセッションなどのパフォーマンスを軸に、国内外での滞在型制作、展示、壁画など。
ソロ活動の他にアーティスト田中良とのユニット[即興絵画組合 GETT]での活動や、2009年より京都・伏見の地にて京都を活動基盤とする数名のアーティストと共にスペース[GURA]を運営。人の表現、意思伝達の依代となる「場」を考察・創造する。

● 古賀 睦 KOGA Mutsumi
1988年生まれ大阪で育つ。京都市立芸術大学彫刻専攻2011年度卒業。
自身の体験や触感を元に立体、インスタレーション、裁縫、平面など様々な形で表現。現在、主に大阪で展示。
「混浴温泉世界 わくわく混浴アパートメント」参加、SHAKE ART!exhibition 2011「a girlie spice !」、SHAKE ART!exhibition「烏丸 michikusa ART」
また音楽と美術、映像の融合実験イベント「地球スープ」にてインスタレーション、立体作品を提供。
http://mutsumi-k.jimdo.com/

● 田中良 TANAKA Ryo
1981年大阪府生まれ。公と私を区別する作用に関心があり、複数のユニットやプロジェクトで同時並行に活動を続けている。最近は村上裕とのアーティスト・デュオWeastでの活動機会が多い。その他に前川紘士との半外プロジェクト、八雄とのライブペイント・デュオGETT、S-T-I-C-K-E-R-Sなどがある。近年の展覧会、プロジェクトに「VYTVRZENI 02」Galerie Umakart(チェコ、2012)、「Mètis -戦う美術-」京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(12)、《S-T-I-C-K-E-R-S × facfac》(11)など。

● 河野如華 KONO Naoka
1984年山口市生まれ、京都市在住。京都市立芸術大学美術科彫刻専攻卒業。アニメーションを制作。主にコマ撮りの手法を用いる。アニメーション上映・制作団体PEASの立ち上げに参加。制作と上映企画を平行しておこなう。毎月定例の上映会や、イベント企画他に携わる。最近の主な制作・活動『air pocket』(Animation Factory Festival 2012 /大阪、東京)、『フラニメーション(PEAS×開き屋合同企画)』(ひがしなり街道玉手箱2012 /大阪) 等。

● 石黒麗 ISHIGURO Rei
1985年兵庫県生まれ京都在住。
京都造形芸術大学情報デザイン学科卒業。
Kyoto METROの定期音楽イベント「KANSEN LIVE」のアートワークや会場装飾、
“S-T-I-C-K-E-R-S × facfac”、”KyoCo”、”¡RAZA SI!”や、自身のzineでのイラストレーションの発表、野外でのピクニックを模したハプニングパフォーマンス等で活動しています。
音楽のような絵を描きます。

● 岡村優太 OKAMURA YUTA
1988年大阪府生まれ。京都精華大学デザイン学部グラフィックデザインコース卒業後、イラストレーションを中心に活動中。また三重野龍、廣田碧と共にペイントユニット”uwn!”(うわん)での活動も行なっている。
近年の展示およびプロジェクトに”CULTIVATE#9”(CULTIVATE/東京、日本橋/2011),”J-FEST 2011”(中央芸術家会館/ロシア、モスクワ/2011)、”BOYS BE ARTST”(E-ma/大阪、梅田/2012)など。

● 貴志真生也 Maoya Kishi
1986年大阪府生まれ、京都市在住。京都市立芸術大学美術学部美術学科彫刻専攻卒業。
美術作品は社会の出来事を確認、理解するための枠組み(実体を掴むための模型)であるとし、その生成過程や手段の考察を行っている。
主な個展 2011年「挨拶&立ち上げ」 (児玉画廊|京都)、2010年「バクロニム」 (児玉画廊|東京)
主なグループ展 2012年「リアル・ジャパネスク」(国立国際美術館, 大阪)