京都スタジオ事例1:124 — 村田宗一郎


スタジオ事例1: 124 — 村田宗一郎インタビュー

2012年5月30日
場所:京都市中京区
インタビュー:HAPS インタビュー協力:早川七月

広いスペースをシェアして使用しているアーティストは京都では多く見かけます。
今回は、東京で学んだ後に京都にいらした村田宗一郎さんに、自身の京都のスタジオについてお話を伺いました。


1京都市内に住み始めたきっかけ

東京藝術大学在学中に高嶺格さんや他の先輩アーティストの現場に関わる機会があり、その多くが京都の作家さんでした。それで、大学生の時にもよく京都に来ていて、友人ができたりと、つながりが生まれました。もともと私は、奈良出身で、京都というまちや、現代美術の中での京都の特殊さ、優れているところ等、様々な面に興味がありました。もし私が東京以外の芸大出身だったら、東京の美術館やギャラリーなどのアートシーンに憧れをもって、卒業後はきっと東京に出たくなったと思うのですよね。だけど、東京で学生時代を過ごして、そういう意味での吸収はもういいかな、というところがありました。優れた作家を輩出している魅力的な京都というまちで制作拠点を構えるのが私にとっては良いのではないかと思ったんですよ。そういう背景があって、東京を出る際に、実家が近いというのもあって、京都で物件を探しました。

ーこのスタジオはどのようにみつけましたか?
 当時は東京にいたのですが、インターネットで探していて、京都の不動産「ルームマーケット」のホームページで今借りている物件の募集を見つけました。事前に下見にも来ました。ここが京都に来て初めて借りた物件です。
 
ーこのスタジオを借りることを決めた理由は?
 住居とアトリエが同じ場所にあるので、24時間制作することが可能なところです。そのことでの善し悪しはあると思うのですが、私は寝食と制作が一体化したような、ごちゃごちゃした生活が好きだったのでここを気に入っています。今年で借りてから3年目になります。


2スタジオ 124について

ースタジオの利用方法について
 広いので、最初から別のアーティストとシェアをして借りています。今は2人の建築家と3人でシェアをしています。1人は京都で活動している方。もう1人は東京をメインに活動されている方で、お仕事とかでこっちに来られた時の仮住まいのように使用されています。アトリエのスペースは、完全にスペースを分けるのではなく、臨機応変に使用しています。

ーシェアされている方々に影響をうけられたこととかはありますか?
 作品のモチーフに建築を用いることがあるので、建築家の方々からは建築の事など、美術とは違う話を聞くだけでもすごくおもしろい点はありますね。あと、シェアしている方の関係者の方が泊まりに来たときに、いろいろ議論したりするのも楽しいです。

ースタジオの活用で工夫したところはありますか?
 アトリエのスペースがけっこうぼろぼろだったので、すす払いをしたり、空間を広く使えるように照明を高い位置に上げたりしました。木工系の職人で、私の作品の制作協力もしてくれている友人の力を借りて、スタジオを作っていきました。壁はなるべく原状復帰できるように、釘だけで留めて抜けば解体できるようにしてあります。原状復帰のことを考えるといじるのは結構厳しいですよね。

ーこのスタジオの良い点、問題点は何ですか?
 良いところは、広さでしょうか。細かい数字はわからないのですが、200平米という話も聞いたことがあります。アトリエスペースが10m×10mほどもあるので、それだけでも100平米ですよね。リビングもかなり広くて、パーティーも打ち合わせもできる空間もあるのは嬉しいです。 ただ広いだけでもなく、個室のプライベート空間が集まっているだけでもない。とても使いやすいです。あと、立地もいいです。徒歩で河原町あたりから帰ることができるなど、市街地も近く、制作していても適度に息抜きもできます。最寄りの駅からは徒歩15分くらい。寝食のスペースと制作のスペースがあまり分け隔ててないところ、市街地の生活と制作が分け隔てられていない、その転換を素早くこなせるのは魅力だと思います。
 問題点は、2階で、しかも間口が狭いので、大きい作品の搬入出が難しいこと。アトリエスペースが、夏になると暑くなるので、日中はちょっとキツい、というかかなりキツい。冬もかなり寒いけど、広いからクーラーを使うわけにはいかないし。それと湿度が高くて作品の保管には本当に向かないですよね。 ある程度の作品はここに保管しているのですが、紙物の痛みがけっこうはげしい。一応、日焼け対策で透明のUVカットのシートを窓に張ったりするなどの工夫はしています。

3京都の暮らし

ー京都に暮らしていて便利な点、不便な点はありますか?
 便利な点は、京都のまちとしてのサイズの小ささと密度は、何より良いですよね。不便な点というか淋しい点は、美術を見る機会が少ないことですね。だから、しょっちゅう東京など別の場所にも行っています。京都にもきれいで大きな箱や場、そして作品を見せる機会がもっとあればいいのに思います。例えば、大きくてきれいな空間がもっとあったら、まちとしても映えると思います。そうなりそうな気もするのですが、あんまりそういう方向にはいかないですよね。

ーこれまで京都で行ってきた活動、展覧会等について教えてください。
 2009年にARTZONEでのグループ展、2010年にこのスタジオでオープンスタジオと、2012年にANTEROOMでグループ展「ANTEROOM PROJECT」に参加しています。大学時代は先輩作家とよく一緒にいたのですが、大学を出てグループ展等の参加をきっかけに、宮永亮くん、小宮太郎くん等と出会いました。それがきっかけで、宮永くんが「オープンスタジオを企画するから何か一緒にしない?」と誘ってくださり、その年、大学の同期だった竹内公太くんとの二人展という形でオープンスタジオを行いました。そこでまた交流が広がりましたね。今まで出会わなかった場所や領域、そういうテリトリーにも偶然アクセスできた。その後も交流を続けて、今では単なるつながりがだんだんと良いコミュニティになってきているなと、思います。今後、京都で発表する予定は、今のところ無いです。

ーこれからの京都に期待している事は?
 まちなどにパブリックな意識みたいなものが、もうちょっと生まれて、開かれていったほうがいんじゃないかな、と思います。京都に対しては、私自身も独特の感情があって、複雑な味わい深さがありますね。ちょっと、京都を離れたときに思い返す京都の雰囲気とか、なんとも言えないものがあります。その、独特な暗さと、対極なところにある、京都以外の人が活発に活動しているような明るさみたいなものが2本両立される状態がいいのかなと思います。だからHAPSの遠藤水城さんのように、京都出身ではない人が関わっているのはすごく良いなと思います。

村田宗一郎 Soichiro Murata
1985年神奈川生まれ。2009年東京藝術大学美術学部先端芸術表現科中退。主なグループ展に「アートアワードトーキョー丸の内 2009」(東京駅行幸通り地下ギャラリー、東京、2009)、「NEW DIRECTION #1 exp.」(東京ワンダーサイト本郷、東京、2009)、「Happy Mind -my view-」(MISAKO&ROSEN、東京、2011)、「Rendez-vous 11」(INSTITUT D’ART CONTEMPORAIN、リヨン、フランス、2011)、「Rendez-vous 12」(South African National Gallery、ケープタウン、南アフリカ共和国、2012)。京都在住。

●村田さんが参加する今後の展覧会情報
「群馬青年ビエンナーレ2012」
サウンドアーティスト/プログラマーの濱哲史との共作で参加致します。
7/7〜8/26、高崎市の群馬県立近代美術館にて。

「Rendez-vous 12」
リヨン・ビエンナーレの若手作家向けプログラムの巡回展で、世界中のビエンナーレ/トリエンナーレから
推薦された若手作家で構成されています。僕は横浜トリエンナーレより推薦を受けて参加致します。
7/11〜10/14 ケープタウンのSouth African National Galleryにて。