日射しの強い昼時、僕らの作業場へ向かう道中、すごい光景を見た。
任さんのビルの上空で大群の鳩が、太陽を背にぐるぐると旋回している。これって鳩なんだ、と分かるまで結構時間がかかった。僕の鳩のイメージは、道ばたでちょこちょこ歩いていて必要なときだけ、ちょろっと飛ぶって感じ。でも目の前の鳩は高速で飛び回っている。なんだか崇高さも感じる。翼もデカいし。 | ||
鳩たちは羽ばたき、空高く飛び上がった。じっとしていた身体を伸ばす様に羽を拡げて上空を旋回した。 今居る位置と自分たちの家の方角を確かめながら、何度も旋回を繰り返して飛んでいった。太陽の位置を頼りに。大気の変化を感じながら。建物や道は地形となり、住処は点となって、空には風の道が現れる。追い風が後押してくれると、まるで高速道路の様に大きな道へと変わる。ジェット気流に乗った時には羽を少し休め、風に身を任せて滑空するんだ。鳩たちは人が到底視ることの出来ない景色や体験し得ない世界を旅している。僕らの住んでいる場所のこと、天候や環境を自分なりに読み解いて、鳩の航路を想像してみたりする。 | ||
「鳩レースについて」 | ||
hyslom / ヒスロム | ||