Exhibition Review

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2022.08.07

mamoru「おそらくこれは展示ではない(としたら、何だ?)」

mamoru

京都市立芸術大学ギャラリー

2022年7月7日(木) - 2022年7月7日(木)

レビュアー:山田章博 (62) ask me!cafe京都(COVD19休業中)店主


 

ふり返らず、即興的に、できるだけ速く考え、書く。だから、細かな名称や年代の誤りなどは、適宜、後から補足、訂正しながら読んでほしい。とりあえずそれが、この七夕の夜の@KCUAでmamoruが僕たちに伝えたかったことの幹にあることがらに忠実な態度だと思うから。

まず2021年末「第十門第四類」があった。京都市立芸術大学とその前身で明治時代から使われてきた(ほんとに使ってたのか?)日本画の大家による人物や動植物などの「手本絵」だ。それがズラッと、天井から吊り下げられた。二階ではmamoruの過去のパフォーマンス映像。
2022年になりmamoruチームによる展開が始まった。それは手本絵の展開ではなく「アーカイブ」、そして「おそらく」「これは」「展示(ではない)」「(としたら、)何だ?」という言葉と概念の展開だ。しかしそれは必ずしも論理的、構築的な展開ではない。即興的にサイドステップを踏みながら、ふり返らず、反芻することなく進む。進んでいるのかどうかも判らない、言葉の奔流(五万字?)が生み出され、会場ではポコポコ、プープーと鳴るひょうきんなリズムとともに、キーワードらしきものが橙色(そういえば、橙(ダイダイ)を上手に食べる話はどこへ行った?そしてトウモロコシもまた。)の背景色に大きく白文字でスライドショーされる。ヒコーキがぶら下がっている。ここはいったい、何だ?

七夕の夜、@KCUA二階の一番奥(北)のキューブに20人ほどは集まった。講演会でも反省会でも合評会でもなく、アーカイブ行為の公開実演。何だそれは?

この企画全体を一応終えた今、企画の資料などを記録として残す、つまり@KCUAの(そして来秋移転開校する京都市立芸術大学の)アーカイブに収蔵するため、また同時に、一般に頒布するために、その「形態」を模索してきたと言う。結論は「樹脂袋の中に資料を入れ、シリコンオイルを充填して密封することで、資料の経年変化を最低限に抑える」という形態だ。

部屋の中央の台に上には、一斗缶ひとつとペットボトル(4本?)のシリコンオイル。台の下には樹脂袋に入ったオイル漬け資料の見本(6個?)がある。その左右にはスタンドの上にスピーカーが据えられた。そしてmamoruの演台の上にノートパソコンとミキサー、マイクなど。

周囲の壁にはダイダイ色のカードにキーワードが数十枚。参加者はそれぞれ3枚の同色のカードを持ち、二枚には壁などのキーワードから選んで、一枚には自発的なフリーワードを書く。その中からシャッフルするように3枚を選んで、その3つのワードを巡ってmamoruがしゃべる、というのがこの会の中心イベントとなった。

ただ、目的はワードを巡る言説や議論を広げ深めるところには、実はない。会場に響く音や言葉は、一斗缶やペットボトルに入ったシリコンオイルに伝わり、その分子を震わせ、原子を励起し、クオークに刻み込まれる。そしてそのオイルが、アーカイブ資料となり、頒布される展覧会記録(?)となる「樹脂袋入りオイル漬け資料集」の製作に使われるのだ。これによって、この夜の会の音響や光景もまた、アーカイブの一部として後世に伝えられることになる。

今、密かに(?)、音響考古学なる学問分野が開拓されつつあるという。発掘物など考古資料の物質に記憶された過去の音像を再現する技術を研究しているらしい。何やらアルケミスト的な匂いがする。この夜の声もまた、未来のいつの日か、誰か知らない知的生命体によって、再現され聞かれる日が来ないとも限らないのだ。

 

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