HAPSは、このたび「公立美術館における障害者等による文化芸術活動を促進させるためのコア人材のコミュニティ形成を軸とした基盤づくり事業」の一環として、滋賀県立美術館 館長(ディレクター)の保坂健二朗氏をゲストキュレーターに招聘し、HAPS HOUSE内のギャラリーを会場とした古谷渉氏の個展「私はなぜ古谷渉を選んだのか」を開催いたします。障害のある人が関わる文化芸術活動を拡張する基盤をつくる本事業の先駆的な取り組みとして、気鋭のキュレーターとともに開かれたアートシーンの形成をめざします。

概要

キュレーションを公平に拡張する vol.1「私はなぜ古谷渉を選んだのか」

会期:2023年1月7日(土)〜29日(日)11:00〜19:00 ※入場は18:30まで/会期中の金・土・日・祝のみオープン
会場:HAPS HOUSE(〒601-8004 京都市南区東九条東山王町1)※駐車場、駐輪場はありません。来場には公共交通機関をご利用ください。
入場料:無料
出展者:古谷渉
ゲストキュレーター:保坂健二朗

古谷渉の作品にはじめて出会ったのは、2016年のポコラートの審査の時だった。それは物干し竿にかけられたタオルを描いたドローイングだったのだが、黒い模様が、タオルのそれなのか、それとも風になびくタオルの起伏に生まれた影を表現したものなのか、もし影だとしてなぜそれを濃厚に表現したのか、それとも単に技術が稚拙なだけなのか、わからないことだらけだった。でも、余白の取り方は他の作品も見てみたいと思うほどにうまく、それゆえ私は自分の名前を冠した賞に彼を選んだ。それから6年経った2022年、彼の自宅を訪れる機会があった。今描いているのは競走馬で、それを今度のポコラートの公募に出すのだと嬉しそうに語っていた。しかし彼は他にもたくさん描いていた。スケッチブックの中には「陰鬱さん」というキャラクターや、相撲取りの絵、絵がうまくなるために手掛けているヌードデッサンなど、さまざまなものがあった。この多様性、あるいはとりとめのなさは、いったいなにゆえなのか。それを判断できる人はいるのか。彼の個展をするとしたら、そのキュレーターはなにをどうすべきなのか。そんなことを考えていたところにHAPSからの連絡があって、この展覧会に至る。
(保坂健二朗)

  

関連イベント

ゲストキュレーターによるトーク※トークは満席となりましたので受付を終了しました(2023/1/12)

本展の関連イベントとして、保坂氏によるトークを開催します。
会場を前に、本展で試みたことや開催してみての思いなどをさまざまにお話しいただきます。

定員:各回10名(要申込)
会場:HAPS HOUSE
日時:
2023年1月13日(金)19:00~20:00 申込はこちら
2023年1月27日(金)19:00~20:00 申込はこちら

  

アーティストプロフィール

古谷渉(ふるたに わたる)
1974年生まれ。東京都在住。幼少から変わっているのかいじめられ自信を失い病がありつつも2010年頃から絵を描き始める事で今にいたる。 ポコラート全国公募Vol.6(2016年)にて保坂健二朗賞を受賞。

古谷渉《シマウカヴ》、2016年
画像提供:ポコラート全国公募展vol.6 撮影:宮島径

古谷渉《陰鬱さん》、2020年

古谷渉《照ノ富士》、2020-21年

古谷渉《後検量》、2021年

  

キュレータープロフィール

保坂健二朗(ほさか けんじろう)
1976年茨城県生まれ。2000年慶應義塾大学大学院修士課程修了。2000年から2020年まで東京国立近代美術館に勤務。2021年より現職。主な著作に『アール・ブリュット アート 日本』(監修、平凡社、2013)など。文化庁および厚生労働省による障害者文化芸術活動推進有識者会議の委員も務める。

  

「キュレーションを公平(フェア)に拡張する」開催にあたって

障害者等の関わる文化芸術活動は近年大きく発展してきました。美術館やコンサートホールなどで彼ら・彼女らの作品に接する機会も珍しいものではなくなっています。とはいえ、そこには「棲み分け」があり、障害者らによるアートは良くも悪くも特別なものとされています。肯定的な反面、その背後には差別や排除があるかもしれません。
本企画は現代美術、とりわけキュレーションの諸実践を通して、この状況に積極的に働きかけるものです。障害者らが天才かどうか、その作品が優れているかどうか、という議論を一旦留保し、キュレーション実践の積み重ねによって考えを進めること。そもそも「芸術家」や「作品」という概念、その良し悪しは、安定して存在しているのではなく、キュレーションの積み重ねによって、絶えず「実務的に」変更されてきたものです。気鋭の現代美術キュレーターによる展覧会制作を通して、小さな躓きの一つ一つを確認し、着実に「開かれた、公平なアート」へと歩みを進めることが本企画の目指すものです。本企画は、「公立美術館における障害者等による文化芸術活動を促進させるためのコア人材のコミュニティ形成を軸とした基盤づくり事業(文化庁委託事業「令和4年度障害者等による文化芸術活動推進事業)」の一環で実施するものです。
(一般社団法人HAPS)

  

お問い合わせ

一般社団法人HAPS
Eメール info@haps-kyoto.com TEL 075-525-7525 FAX 075-525-7522   

公立美術館における障害者等による文化芸術活動を促進させるためのコア人材のコミュニティ形成を軸とした基盤づくり事業(文化庁委託事業「令和4年度 障害者等による文化芸術活動推進事業」)
主催:文化庁/一般社団法人HAPS
協力:社会福祉法人おいてけ堀協会