showcase #6 “引用の物語 Storytelling” curated by minoru shimizu

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開催情報

 
【作家】金 サジ、三田健志
【期間】2017年5月5日(金)—5月28日(日)
【開館時間】12:00~18:00 
【休館日等】月曜日〜木曜日は予約制
【料金】無料
オープニングレセプション:5月5日(金)18:00-20:00

http://en-arts.com/portfolios/showcase-6/

会場

 
会場名:eN arts
webサイト:http://www.en-arts.com/
アクセス:〒605-0073 京都市東山区祇園町北側円山公園内八坂神社北側
電話番号:075-525-2355
開館時間:12:00~18:00 
休館日等:月曜日〜木曜日休み

概要

2017年5月、eN artsでは、清水穣氏のキュレーションによります、写真に特化したグ ループ展 “showcase #6-引用の物語” を開催いたします。展覧会のタイトルが示す通り、 現代若手写真家の「ショーケース」となるこの展覧会は2012年からスタートし、今回で シリーズ六回目となります。
Showcase #6 のテーマは「引用の物語」です。金、三田の両氏の作品から紡ぎ出され る物語をお楽しみ下さい。
eN arts

showcase #6 – 引用の物語

第6回目showcaseのテーマは、写真における「語り narrative」です。

写真は言葉に対して無防備であるがゆえに、絶対的に中立的です。どんな平凡な風景写 真でも、「暴走事故で幼い命が犠牲になった場所」・・・などと書き添えれば、その平凡さ こそが切ないオーラとなって写真を覆うでしょう。ありきたりの人物写真、でも「撮影 時すでに末期癌だった」・・・などと聞けば見えるはずもない運命の予兆をその表情の上に 探してしまう。しかし、後付けの物語は写真の見方には影響しても、写真自体を変化さ せはしません。写真が言葉に染まることはなく、写真は饒舌な語り部の道具にはならないのです。

他方で、風景写真であれ人物写真であれ、ただ見ているだけでさまざまな連想が浮かん で、断片的な物語を次々と招き寄せるような写真が存在します。物語は外から写真に付 け加えられるのではなく、写真のなかの豊かな細部が、写真を見る私たちの記憶や経験 を刺激して、物語を引き出すのです。

様々なところから、既視感のあるモチーフを引いてきて組み合わせることで、「narrative」 な写真を展開する作家のなかから、異なる二つの才能として、今回は金サジと三田健志 を選びました。

金サジ(1981-)は 2016 年度キヤノン写真新世紀グランプリ受賞。受賞作「STORY」 のシリーズは、ホルバインを思わせる精緻で美しい細部に満ちた、広い意味で —つま り人間に限定されない— 肖像作品です。そのフォーマットは常に「対峙」であり、被 写体と写真家は正対しています。

どこか単一の民族や人種や国家、なにか純粋な神話や伝統といった、帰るべき本来性の 場所を、私たちは、よほど歴史に無知で素朴でも無い限り、信じることができません。 そういう現代社会において、金はあえて、擬似的に宗教、儀式、土俗性、民族性、風土 といった本来性の場所を連想させる断片的なモチーフを巧みに組み合わせて新しい神話 を紡ぎます。それは、もはや帰るべき場所をもたない者が、これから帰る場所なのかも 知れません。帰属意識とは異なる、たった一人のアイデンティティの探求であるのかも 知れません。

本展では、この「STORY」と、それを準備したスナップショットのシリーズを展示し ます。

三田健志(1979-)は 2015 年度キヤノン写真新世紀優秀賞(清水穣選)。大自然の美し い風景写真は、よく見ると奇妙な細部を備えています。三田は、インターネット上で入 手可能な大自然のイメージをプリントアウトし、それを画像の凹凸に合わせて実際に折 り曲げ、そうして作られた立体的風景を舞台の書き割りのように見なして、そこへさら に別のイメージ —旅行者、冒険家— を挿入し、全体を1つの風景写真として再撮影します。

私たちは、旅行者/冒険家として設定された視点を通じて、借りてきた風景の中に入り 込みます。三田の基本フォーマットは従って「追跡」です。グーグルアースのなかの仮 想旅行のように、私たちは旅行者/冒険家の後を追って、あらゆるストリートに軽々と 降り立ち、360 度の風景を楽しむわけです。

他方で、作者は紙の縁を見せたり奇妙なアングルを選択したりして、それが擬似的な旅 行であることを露呈させます。ネット上に溢れるイメージの大洋で視覚的に溺れながらも、醒めきった冒険家は、どこか、本当に降り立つことのできる場所を探し続けている のです。

2017年5月 清水 穣

清水 穣(しみずみのる) 写真評論家。定期的にBT 美術手帖、Art It といった雑誌やWeb、写真集、美術館カタログに批評を掲載。主な著書に『写真と日々』『日々是写真』『プルラモン 単数にして 複数の存在』(現代思潮新社/2006 年、2009 年、2011 年)など。

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