ALLNIGHT HAPS 2018前期「呼び出し、交換」

東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)では、2018年7月31日(火)より、批評家・黒嵜想の企画によるALLNIGHT HAPS 2018前期「呼び出し、交換」を開催いたします。

概要

ALLNIGHT HAPS 2018前期「呼び出し、交換」

会期: 2018年7月31日(火)〜2018年11月10日(土)
企画: 黒嵜想
出展作家: 
 #1 蕗野幸樹 2018年7月31日(火)~8月24日(金)
 #2 奥祐司  2018年9月7日(金)~9月29日(土)
 #3 岡田真太郎 2018年10月12日(金)~11月10日(土)
展示時間 18:00〜9:30(翌日朝)
会場 HAPSオフィス1F(京都市東山区大和大路五条上る山崎町339)
主催 東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)
支援 平成30年度 文化庁文化芸術創造活用拠点形成事業
助成 公益財団法人 朝日新聞文化財団

企画趣旨

friendshipとtrustとの間には、分割線が引かれた。
私たちは、SNSによってコミュニケーションはそれ自体を目的として行うことができ、公開されている情報は交渉なしに取得することが容易になった。例えば、一冊の本を手に入れるために古本屋の店主と話すことも、私たちにとって今や、無用の煩わしさとなった。店主との対話はそれ自体を楽しめばよく、また、本はそれ自体を検索して手に入れればよい。

友情と信用は別物。だからこそ、それぞれ個別の「情報」として呼び出すことができる。かくして「情報流通」は可能となった。この広大な流通網の中で、私たちは、友情を結ぶべき好ましい相手、信用に足る知識と、直接に関係を結ぶことができる。メディアは限りなく透明になり、孤独も関心も、即座に満たすことができる。

呼び出しと交換の可能性に開かれた、圧倒的な流通網。好悪の市場と、真偽の評価は、それぞれに棲み分けられた。だが、一方で失われつつあるのは、「取次」のイメージだ。かつてfriendshipとtrustの間に立っていた障壁であり、しかし、その両者を取り次いでいた存在。例えば、古本屋はほとんど見かけなくなった。

批評家もまた、その「取次」の一つなのだろうと、筆者は考えている。「好き」の感情へ言葉によって水を差し、真偽の別なる評価を作る。好悪を操る政治と、真偽の判断が分断された情報環境を前にして、まさにそのような批評という「取次」が必要なのだと信じて、筆者も活動している。だがこれもまた、時代の要請と逆行する、不要の行いなのだろうか。

本展では、筆者とは別のかたちで「取次」を実践しているように思えた三人を紹介する。聞けば、アートは今、コレクティブ(集団)での制作が新たなムーブメントとして喧伝されているようだ。みんなで作ること、あるいは、みんなが作品になること。それはそれで良いとして、ならばその「みんな(の制作)」はどのように流通しているのか。コレクターはその一員なのか。

手動式交換電話は、電話交換手を必要とした。発呼者は、希望する接続先を交換手に伝え、彼ら彼女らが相手を呼び出し、回線を交換するまでに、この取次者の声とコミュニケーションをする必要があった。情報流通の間にある取次そのものが、不透明な人格として露出していた。筆者はそのような、不必要な連絡が担っていたものをこそ、捉え直したい。私たちが手にした「情報流通」は、果たして透明なものだろうか?

物理的な流通網には、未だ無数の取次業者が潜在している。取次者なくして流通網は存在しない。インターネットで本を買ったとしても、配達者は介在する。真偽を定める情報にも、その背景には特定の集団の裁定が介在している。好悪を交換する親密圏には、それをとり結んだハブとなる人物が介在している。本展で紹介する三人は、筆者が活動するなかで見つけた、名前を持った「取次者」たちである。

彼らは呼び出しと交換の間にいる。friendshipを交換し、trustを呼び出す、不透明な取次者たち。本展は、彼らにストックされたものを筆者が呼び出し、交換する、コレクション展である。
(黒嵜想)
 

出展作家

[1]蕗野幸樹(ふきの こうき)
1975年生まれ。「高友社」所属の書家。古典を重んじつつ新たな表現を模索している。テレビCM、ドラマへの筆文字提供多数。
主なグループ展に「高友社書展」上野の森美術館(東京/2012~2018年)、「カオス*ラウンジ怒りの日」(いわき/2015年)など。
 

[2]奥祐司(おく ゆうじ)
1980年生まれ。金沢市在住。フライヤーおよびポスターのイメージ撮影、展覧会導入ビデオ制作、トーク撮影およびドキュメント映像制作のほか、料理や物の移動を行なっている。

「アートドキュメント2017 河口龍夫 ― 眼差しの彼方」金津創作の森(福井/2017年)
「泉太郎 突然の子供」金沢21世紀美術館(石川/2017年)
「クロニクル、クロニクル」 CCOクリエイティブセンター大阪 (大阪/2017年)
「写真的曖昧」金沢アートグミ(石川/2018年)
「扇田克也 光のカタチ」富山ガラス美術館(富山/2018年)
 

[3]岡田真太郎(おかだ しんたろう)
美術商。アートフェア東京2013にて、渋家を不動産ごと入手できる作品《Owner Change》設計、様々な作者による歌留多の札を販売。批評誌アーギュメンツ#1#2発行。編集事務所ターメルラーン企画担当。伏見地下街協同組合専務理事、アートマネージャー。布団祭。浅草長屋アトリエ在住。
 

企画者プロフィール

黒嵜想(くろさき そう)
1988年生まれ。批評家。音声論を中心的な主題とし、批評誌の編集やイベント企画などの、論考執筆に限らない多様な評論活動を自主的に展開している。著者自身による手売り」のみに販路を絞った批評誌『アーギュメンツ#2』では編集長を、続刊『アーギュメンツ#3』では批評家・仲山ひふみと共同編集を務めた。

ALLNIGHT HAPSについて

本企画は、若手アーティストおよび若手キュレーターの養成を目的とする、年間2名の企画者による展覧会シリーズです。HAPSオフィスの1階スペースにて終夜展示を行い、道路からウィンドー越しに観覧いただきます。

これまでのALLNIGHT HAPSアーカイブはこちらhttp://haps-kyoto.com/allnight-haps-archive/




助成: